2020.09.25 08:00

【愛知目標未達成】生物多様性の維持ピンチ

 地球の豊かな生態系は、さまざまな種がつながって保たれている。自然破壊によって、その「生物多様性」が急速に損なわれている。
 森林減少や種の絶滅が進行し、国際的な保全目標だった「愛知目標」の多くが達成できない―。そんな国連の報告書が公表された。
 進行している危機に対処し、日本でも優先度の高い問題として取り組む必要がある。かけがえのない生物多様性を維持したい。
 愛知目標は2010年、名古屋市で開かれた生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で、20年までを達成期限として採択された。
 「森林などの損失速度を半減」「水産資源を持続的に漁獲」「サンゴ礁の健全性維持」など、20項目からなる。このうち一部でも達成できたのは、「侵略的外来種の制御や根絶」「陸域17%と海域10%を保護区に」など6項目にすぎない。
 COP10で議長国だった日本は、開発規制を恐れる途上国を説得するなど粘り腰の交渉で合意に導いた。愛知という日本名の入った目標が未達成となるのは極めて残念だ。
 なぜ達成できなかったのか。
 森林は年470万ヘクタールのペースで減少している。それを加速させるように、大規模な森林火災が相次いでいる。地球温暖化による高温や乾燥の影響が指摘されている。火災により死んだり、生息地を追われたりしたコアラやカンガルーなどの野生動物は約30億匹に上る。
 サンゴ礁も温暖化や海洋酸性化の影響を受けているほか、魚類の乱獲やプラスチックごみによる海洋汚染も。人間の活動に伴うさまざまな弊害が、地球環境をむしばんでいることが大きい。それにより、種の絶滅が自然状態の100~千倍の速さで起きているとされる。
 生態系保護のためには、途上国と先進国の協調が欠かせないことが以前から指摘されてきた。先進国から途上国への技術協力や資金援助、情報共有や人材育成などは十分に行われてきたか。各国が検証し、改善していかなければならない。
 温暖化や生息地の破壊によって野生動物の分布域が変わると、ウイルスが人間に移行する機会が大幅に増える。新型コロナウイルスなど、動物由来のウイルス感染が広がりやすくなる恐れも高まる。自然環境を損ねてしまう代償は大きい。
 来年5月に中国で開かれる予定のCOP15では、愛知目標の後継となる保全目標を決める。遅れを取り戻すためには保護区の一層の拡大やプラスチックごみによる汚染の半減など、これまで以上にハードルを上げなければならないだろう。
 むろん日本も対策を強化しなければならない。ところが内閣府によれば、日本では生物多様性という言葉を国民の半数がまだ知らないとされる。
 私たちは生物多様性の大切さをもっと知る必要がある。そして維持に努めよう。生命あふれる豊かな地球を将来世代に残すために。

カテゴリー: 社説

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