2020.09.24 08:37

宅配便に印鑑・サイン必要? コロナで進む非対面配達【なるほど!こうち取材班 パートナー紙から】

車に配達物を積み込む松江中央郵便局の社員(松江市)
車に配達物を積み込む松江中央郵便局の社員(松江市)
 新型コロナウイルスの影響による巣ごもり消費で需要が伸びている宅配便。感染防止対策の一環として、運送各社は受取人と配達員が直接顔を合わさない「非対面、印鑑・サイン不要」で受け渡す方法を取り入れている。そこで浮かび上がるのが「そもそも受け取りのサインや印鑑って必要なの?」との疑問だ。山陰中央新報「さんいん特報班」(松江市)に寄せられた声を基に現状を探った。

約款や法的根拠なし
 「荷物は玄関前に置いてください」。受取人がインターホン越しに伝えると、配達員は指定場所に荷物を置き、配達完了。受取人と対面せず、次の目的地に向かった。

 コロナ禍で宅配大手のヤマト運輸や佐川急便は2~4月、代金引換などを除き、非対面の受け渡しを開始。対面でもサイン省略をできるようにした。

 配達員から渡されたボールペンを手にすることに不安を感じる人が増えたのが理由だ。島根県内でもサインを拒み、伝票に触らないケースが出ているという。

■証明書として
 配送のルールとなる国土交通省の「標準宅配便運送約款」や、各社の約款には一般的な宅配便の受け取りに「サインや押印が必要」との文言はない。では、サインや押印をする理由や始めた時期は?

 宅配大手は取材に対し「明確な決まりは約款にないが、荷物を渡した証跡として社内規定でサインをもらうことにしている」(ヤマトホールディングス)、「サービス履行を示すため」(日本郵便中国支社)、「1957年の創業時から実施している」(佐川急便)と回答。

 受取人とドライバーがインターホン越しに会話して非対面で受け渡す際は、ドライバーがその旨を配達票に記載し、サインや押印に代えているという。ヤマトホールディングス広報担当の杉本香緒里さん(30)は「コロナ収束後も非対面を継続するかどうかは、利用者の反応を見て社内で協議する」と話す。

■拡大する市場
 ネット通販での衣服注文をはじめ、インターネットで契約や決済をする電子商取引(EC)市場が拡大する中、需要が増えているのが留守時に玄関先や自転車のかご、物置、専用かばん、宅配ボックスなど指定の場所に商品を置く「置き配」だ。いつでも受け取れるだけでなく、コロナ禍で対面を避ける心理が重なり、注目されている。

 特に宅配ボックスは大型の新築マンションのほぼ全てに設置され、古いマンションでは改修して取り付ける動きも。駅やスーパーマーケットでの設置も全国的に進んでいる。

■盗難のリスク
 宅配便の取扱個数は1989年度に年間約10億個だったのが、2018年度は43億701万個に急増。再配達も少なくなく、2019年4月の再配達率は16%だった。今年4月は新型コロナに伴う外出自粛で8・5%に減ったが、再配達に必要な労働力は年間約9万人分に相当するとの試算(2014年度実績)もある。配達員不足にあえぐ宅配業界にとって、置き配はコストを減らし業務を効率化する利点がある。

 懸念は盗難だ。置き配が普及している米国では被害が問題化しており、国内でも都内では3月以降、約20件の被害が発生。こうした状況を受け、大手保険会社では、置き配の荷物を標準的な家財保険の補償対象にする動きが出始めた。

 コロナ禍で、より取扱個数の増加が見込まれる宅配便。テレワークに伴い、一部企業などで「脱はんこ」が進んだように、非対面の受け取りが日常になるかもしれない。(山陰中央新報)

 県民・読者の情報提供に基づいて取材する「なるほど!こうち取材班」(略称=なるこ取材班)は、同様の調査報道に取り組む全国の地方紙と、記事交換などをするパートナー協定を結んでいます。各紙の記事を随時掲載します。

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