2020.09.22 08:00

小社会 彼岸の中日

 作家の故三浦哲郎さんが東北本線で古里青森へ帰る途中のことだった。列車が青森に入った頃、近くに座っていた若い女性が「菜の花が咲いている」。驚いた声を上げた。

 三浦さんが車窓から眺めると、黄色の絵の具で塗りつぶしたような畑が見えた。菜の花に似ているが、季節は秋の初め。〈何が起こるかわからない昨今でも、東北で秋に菜の花が咲くわけがない〉。半世紀ほど前の随筆でユーモラスに紹介している。

 菜の花に見えたのは食用菊だった。ゆがいておひたしにしたり、みそ汁に入れたりして食べる。若い女性は恐らく青森の出身ではなかった。地元では、秋の味覚として今も親しまれているという。

 きょうは秋分の日。お彼岸の中日でもある。夏の酷暑を忘れるように、朝夕は涼風を感じる時季となった。4連休中に高知市内の量販店をのぞくと、墓参用にたくさんの花が並んでいた。かれんな花をつけた菊を買い求める人も多かった。

 新型コロナウイルスを心配して、お盆は帰省を控えた家族が少なくない。お彼岸はどうだろう。県外ナンバーの車をよく見掛けた。祖父母や両親らの健康を気遣いつつ、墓参に帰省した家族もいただろう。

 三浦さんの母は、菊の花のみそ漬けが得意だった。都会へ毎年送ってくれたが、小包を縛るひもはいつも緩かった。東北の秋は足早に過ぎ去る。ひもを縛る母の手はかじかんでいた。三浦さんはむろん気付いていた。


9月22日のこよみ。
旧暦の8月6日に当たります。つちのえ たつ 八白 先勝。
日の出は5時54分、日の入りは18時03分。
月の出は11時05分、月の入りは21時33分、月齢は4.7です。
潮は中潮で、干潮は高知港標準で2時54分、潮位39センチと、15時03分、潮位93センチです。
満潮は9時26分、潮位179センチと、20時51分、潮位186センチです。

9月23日のこよみ。
旧暦の8月7日に当たります。つちのと み 七赤 友引。
日の出は5時55分、日の入りは18時01分。
月の出は12時12分、月の入りは22時21分、月齢は5.7です。
潮は小潮で、干潮は高知港標準で3時45分、潮位47センチと、15時47分、潮位113センチです。
満潮は10時33分、潮位162センチと、21時27分、潮位173センチです。

カテゴリー: 小社会コラム

ページトップへ