2020.09.18 08:00

【桜を見る会】中止で済む問題ではない

 菅義偉首相が就任後初めての記者会見で、首相主催の「桜を見る会」について「来年以降中止したい」と表明した。
 安倍晋三前首相の地元後援会員が多数招かれたとして、「私物化」批判が強まっていた。新政権として、国民が抱く疑念に答えられないのなら中止は当然だろう。しかし、それで幕引きにしてもらっては困る。
 実態はどうなっていたのか。菅首相は国民への説明責任を果たさなければならない。
 桜を見る会は毎年春、公費を使って東京・新宿御苑で開かれてきた。皇族や各国駐日大使のほか各界で功績のあった代表者らが招かれ、無料で飲食などが提供される。
 官邸や与党が招待者を推薦する「政権枠」があり、安倍前政権下で招待者や経費が急増。反社会的勢力とみられる人物が参加したり、参院選を前に与党の支援者が多数招かれたりしたケースもあったとされる。
 前政権は招待基準の明確化やプロセスの透明化を検討するとし、今春の同会を中止した。
 菅首相の発言は、少なくとも自らの在任中は開催しないことを意味しよう。なぜ方針を転換したのか。招待基準など運営を見直す検討はどうなったのか。本来、慰労されるべき功労者にとっては、その場が失われることになる。影響や政権の責任は大きいだけに、経緯をきちんと説明するべきだ。
 同会の招待者名簿に関しても、野党議員が資料請求した日に内閣府が廃棄していた。国会に提出した別の資料では、推薦した部局名の一部を隠す加工が施されるなど、行政文書のずさんな扱いが次々と明らかになっている。
 野党などは実態解明のため、廃棄したとされる招待者名簿の再調査を要求している。しかし、官房長官として前政権を支えた菅氏は拒否し続けてきた。
 思い出されるのは獣医学部新設を巡って、安倍前首相の友人が理事長を務める加計学園が優遇されたのではないかという疑惑だ。
 「総理のご意向」と記された文書を菅氏は当初、「怪文書みたいなもの」と一蹴していた。ところが再調査に追い込まれた結果、その存在を認めた経緯がある。
 菅首相は記者会見で、「客観的におかしいことは直していかないといけない」とも述べた。桜を見る会の問題も、客観的に見ておかしいことだらけである。かたくなに再調査を拒むのは、会見での自身の言葉と矛盾しよう。
 公文書の軽視は安倍前政権を象徴するものだった。菅政権がこれを継承することは許されない。
 2018年の桜を見る会の前夜に開かれた夕食会を巡っても、有権者に飲食代を提供したとして、安倍前首相らが公選法違反(寄付行為)などの疑いで告発されている。
 疑惑は何一つ解明されていない。菅首相はこの問題に真摯(しんし)に向き合うべきである。

カテゴリー: 社説

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