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2020.09.15 08:00

【菅新総裁】安倍政治の継承だけでは

 自民党の総裁選で菅義偉官房長官が新しい総裁に選ばれた。
 岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長との三つどもえの構図だったが、国会議員票と地方票の双方で両者に大差をつけた。
 あす召集される臨時国会で、安倍晋三首相の後継となる第99代首相に指名される。予想通りの結果とはいえ、今回総裁選の経過には疑問を感じざるを得ない。
 安倍首相の突然の辞任表明や、新型コロナウイルス感染症の収束が見えない中、政治的空白はつくれない―。そんな「大義名分」の下、安倍政権の屋台骨を支えた菅氏に党内各派閥の支持が雪崩を打った。
 無派閥の菅氏が総裁に選ばれることは極めて異例だ。そこには現状の派閥の均衡を維持し、勝ち馬に乗って党内、閣内の主要ポストを占めたいとの思惑も見て取れよう。
 相も変わらぬ派閥の論理で勝敗が決まる。古い政治の体質がまたもあらわになったことに、失望を感じた国民は少なくあるまい。
 開票結果では地方票でトップの菅氏が89票、2位の石破氏が42票で2倍超の差がついた。それが国会議員票では菅氏288票、石破氏26票と10倍以上に広がっている。
 全国一斉の党員・党友投票が見送られたため一概には言えないかもしれないが、そこには派閥の力学に左右される国会議員票と地方の民意とのずれも感じられよう。
 菅氏はアベノミクスなど、安倍政権の政策の継承と前進を打ち出している。独自色のある政策はまだよく見えてこない中、「縦割り行政の打破」をアピールしている。それは必要なことに違いない。
 一方で菅氏は安倍官邸で内閣人事局を仕切り、人事を通して官僚に忖度(そんたく)をまん延させたとも指摘されている。縦割りの打破が、「官邸一極集中」をさらに強化するものであるなら看過できない。
 沖縄の米軍普天間飛行場の辺野古移設問題では、官房長官として「粛々と進める」と繰り返し地元の反発を招いた。森友、加計学園や桜を見る会の問題でも、安倍政権は住民の声に耳を傾け、国民への説明責任を果たしてきたとは言えない。
 長く政権の中枢にいた菅氏が、そうした「負の遺産」を継承することを国民は望んでいない。それを肝に銘じるべきである。
 政権運営を与党より官邸がリードする「政高党低」への不満も、党内外で蓄積されてきた。これも官邸の権限強化、側近重用などの弊害と指摘されている。
 総裁選で岸田氏は「分断から協調へ」、石破氏は「納得と共感の政治」をそれぞれ訴えた。党内でも安倍政治のゆがみが、少なからず共通認識となっていた証しであろう。
 岸田、石破両氏が指摘した安倍政治の「不備」を、菅氏は真摯(しんし)に受け止め、党運営と政権運営に生かしていかなければならない。
 それなしに国民から信を得ることはできない。
カテゴリー: 社説

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