2020.09.13 08:00

【浸水区域の規制】地域の「減災」考えたい

 気候変動で頻発する水害に備えて、浸水想定区域での開発規制に乗り出す自治体が増えつつある。
 県内でも高岡郡日高村が本年度内に「総合治水条例」の制定を計画している。洪水時に遊水池となる機能を維持しようと、農地への盛り土禁止などを盛り込んでいる。土地利用を規制して「減災」を図る試みだ。ただ、産業振興や定住を妨げかねないマイナス面もある。
 日高村のような検討は今後、他の自治体に広がる可能性がある。住民や企業も考えるべき課題といえる。
 治水対策はこれまで行政任せや、ハード整備頼りになりがちだった。住民も意識を変えて「わがこと」として捉え直したい。その上で、水害に強い地域づくりを進めていく必要がある。
 日高村には、長きにわたる「水との闘い」の歴史がある。日下川、戸梶川が氾濫しやすく、1975年の台風5号では25人が犠牲になった。
 その後、放水路整備などのハード対策は進んだものの、住宅団地開発などもあり、2014年の台風12号では、159戸が床上・床下浸水の被害を受けた。
 条例案では、その台風12号の降雨量を基にして、約250ヘクタールの浸水予想区域を明示する。この範囲で農地は原則かさ上げを認めず、3千~1万平方メートル未満の宅地や工場建設には十分な排水路整備などを求める。
 自治体がこうしたソフト対策で「減災」を進める取り組みは、国の治水対策の見直しと連動している。
 国土交通省は7月、防災・減災総合対策を公表し、「流域治水」への転換を打ち出した。堤防やダムなど従来のハード対策だけでは、安全度を向上させるのは容易ではないとの考えからだ。その中に、土砂災害などの危険がある地域での開発規制などを盛り込んでいる。
 具体的には地域ごとに浸水や土砂崩れなどの危険度をチェックし、宅地のかさ上げや避難路の整備、住宅移転などに優先順位をつけて取り組むよう促している。
 ただし全国調査によれば、15年時点で浸水想定区域に住む人は3539万人と、日本の全人口の3割近くに上っている。
 土地が安い郊外を中心に開発が進み、かつては浸水のリスクから人が住まなかった場所も宅地化されている状況がある。
 リスクの低い土地への住宅移転などは難題となろう。国や自治体は住民らに十分な情報を提供し、丁寧に説明して合意形成を目指していく必要がある。
 気候変動によって水害は激甚化しており、豪雨の頻発や巨大台風の発生が予想されている。私たち住民はまず、自宅周辺の水害リスクを把握したい。自治体が公表しているハザードマップなどで確かめられる。
 命を守る備えの第一歩であり、安全で住みよい地域を考えるきっかけにもなろう。地域で防災意識を高め、住民主体で「減災」に向けた取り組みを進めたい。

カテゴリー: 社説

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