2020.09.12 08:00

【核のごみ処分】東洋町の教訓生かされず

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場。その候補地選定に向けた文献調査に、北海道寿都(すっつ)町が応募を検討していることが波紋を広げている。
 町内外で反対が続出している状況は、2007年に全国で初めて応募した高知県の東洋町のケースと同じだ。国が交付金を示して、自治体が手を挙げるのを待つ姿勢も変わっていない。核のごみ処理への国の関与のあり方が改めて問われている。
 処分場は文献(約2年)、概要(約4年)、精密(約14年)の各調査を経て決定する。文献調査で最大20億円、概要調査で同70億円の交付金が支払われる。
 寿都町長は町民の同意を前提に、精密調査にも意欲を示している。現在は住民説明会を開催中で、10月以降に文献調査に応募するかどうか判断するという。
 原発政策を巡っては高い透明性が求められる。にもかかわらず東洋町では、当時の町長による文献調査への応募が「秘密裏」に行われ、強い反発を招いた。
 寿都町でも町民や議会の理解を得ないまま町長が突然、応募検討を表明した。町内で賛否が割れ、周辺自治体のほか北海道知事も反対するなど、地域の混乱が深まっている。東洋町の教訓が生かされているとは言いがたい。
 財政難の自治体にとって、多額の交付金は魅力的に映る。そうした自治体の足元を見透かすように、札束を積んで誘致を促す手法への批判は根強い。
 公募制度は一見、民主的な手続きに思える。しかし応募の権限を首長に与える一方で、議会や住民の意思をどう反映させるかは曖昧だ。東洋町で住民が分断される混乱が生じた際も、国が主体的に関わる姿勢が見えなかったことも不信感を高めた。
 その反省も踏まえて国は2017年、候補地となる可能性のある地域を日本地図上に示した「科学的特性マップ」を公表した。火山や活断層が周囲になく、地層や地質が安定した地域を適地に分類。このうち、核のごみを搬入しやすい海岸近くを最有力候補地としている。
 国が前面に立って選定を進めるという触れ込みだったが、適地は全都道府県に存在し国土の7割弱が該当する。最有力候補地のある自治体も、全市区町村の過半数の約900に上る。まだまだ国がイニシアチブを取っているとは言えまい。
 原発が稼働を続ける以上、核のごみは発生し最終処分場は不可欠だ。将来世代への先送りも許されない。国は公募を待つだけでなく、より踏み込んだ対応を検討する時ではないか。科学的知見に基づいて、複数地域への検討申し入れを国の責任で行うのもその一つだろう。
 核のごみをこれ以上増やさないよう、脱原発への道筋を国がはっきり示すことも必要だ。応募検討に向けた動きは寿都町以外にも見られる。国民的な関心を高めるために、国がやらなければならないことは多い。

カテゴリー: 社説

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