2020.09.09 08:00

【台風10号】備えの大切さを再認識

 「特別警報級に発達する可能性がある」―気象庁が事前に記者会見を何度も開くなどして警戒を強く呼び掛けた台風10号。朝鮮半島から北へ抜けて温帯低気圧になった。
 台風は、九州のほぼ全域を暴風域に巻き込みながら北上し、九州や関西など広い地域で死傷者が出た。重軽傷者は100人を超えている。
 ただ、大規模な土砂災害や水害が広いエリアで続発するといった最悪の事態とはならなかった。不幸中の幸いといえる。
 特別警報は、台風の中心気圧が930ヘクトパスカル以下、または中心付近の最大風速が50メートル以上で接近、上陸が予想される場合に出される。
 事前の予測で気象庁には、5千人を超える犠牲者が出た1959年の伊勢湾台風並みに発達するとの危機感があった。
 例えば沖縄や奄美で最大瞬間風速85メートル、九州南部では24時間の最大雨量800ミリといった予想を出していた。千葉県で鉄塔が倒れるなどして大規模停電が起きた昨年の台風15号でも最大瞬間風速は57・5メートルだった。
 警戒を呼び掛ける会見や報道などで、多くの住民が危機感や防災の意識を高めたのは間違いない。食料や防災用品を事前に買い求めたり、ホテルや親戚宅などに避難したりした人も少なくなかった。
 幸いというべきだろう。事前に似たようなコースで北上した9号の強い風で海水がかき混ぜられ海面水温が低下。供給される水蒸気量が減ったことで10号の勢力は弱まったとみられている。
 気象庁も特別警報の発令を見送った。しかし、これを「空振り」と捉えるのは間違いだろう。気象現象はさまざまな要因で変化する。
 万が一や最悪の場合を考え、自分や家族らの命を守る準備をしておく。台風に限らず全ての災害に必要な心構えだ。油断こそが一番の敵。備えの大切さを改めて認識したい。
 一方で、自治体が開設した避難所では課題もあった。
 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、避難所は3密(密閉、密集、密接)を避ける対策を取っている。必然的に1施設当たりの収容人数は減っている。
 定員に達した避難所に入れず、別の施設への移動を余儀なくされた住民がいたという。風雨が強まった時点での移動は大変危険だ。
 住民の安全を考えて、定員を超えても受け入れた避難所もあるというが当然の対応だろう。
 コロナ対策を見越して多くの自治体は避難所の数を増やしていたはずだ。その予測が果たして十分だったのか。まだまだ台風シーズンは続く。早急に洗い出しが必要だ。
 台風10号では洪水を防ぐため、高知県の杉田ダム(香美市)を含めて11県・70以上のダムで事前放流が行われた。雨量が予想より少なく、国などの効果の検証はこれからだ。住民一人一人が防災意識を高めるとともに、さまざまな対策を「命を守る」ために最大限に生かしたい。

カテゴリー: 社説

ページトップへ