2020.09.08 08:00

【自民総裁選告示】安倍政治の総括を論じよ

 安倍晋三首相の後継を選ぶ自民党総裁選がきょう告示される。
 次の首相に就く新総裁選びには菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長が名乗りを上げた。
 ところが、党内では告示前から、本格的な政策論争を抜きに派閥の力学で菅氏の優位が動かない構図が固まった。早くも始まった論功行賞争いには違和感が拭えない。
 菅氏は安倍政権の取り組みの継承や前進を強調している。長く政権中枢で安倍氏を支えてきた立場から継承を言うのは当然ではあろう。
 しかし、歴代最長となった1強政権が生んだゆがみや弊害は党内でも気づいていないはずがあるまい。権力の交代を機に安倍政治の総括を議論し、功罪を見極めて政策や政治手法を修正しなければ、国民の支持は得られまい。
 経済政策「アベノミクス」は、円安や株高が大企業や富裕層を潤したが、中小企業や多くの国民は景気回復の実感に乏しいままだ。
 菅氏は「しっかりと引き継ぎ、さらに前に進めたい」とする。
 これに対し、岸田氏は「成長の果実が中間層や中小企業、地方に分配されていない」として格差是正の必要性を指摘する。石破氏は「構造改革が進まず成長力が生かされなかった」とし、都市と地方の経済格差を解消する政策を総動員する考えを示している。
 問題意識を共有し、次期政権の政策に生かされるような論戦を展開するよう求める。
 長期化した1強政治の弊害が顕著になったのは森友、加計学園や「桜を見る会」を巡る疑惑だろう。行政の公正さへの疑問や説明責任の欠如のほか、官僚の忖度(そんたく)がはびこり公文書の破棄や改ざんが相次いだ。
 石破氏は、国民は納得していないとして「解明をまず第一にやる」と言及した。岸田氏は、権力の私物化批判に関し「信頼を取り戻すために透明性を高める」とする。
 一方の菅氏は、特に森友問題に関して「既に結論が出ている」として再検証の必要性を否定している。
 共同通信が7月に行った世論調査では、森友問題は再調査の必要があるとの回答が8割を超えた。与党支持層でも7~8割台に上る。世論とのずれまで継承する政治姿勢だとすれば、危惧するほかない。
 安倍政治の「負の遺産」には政官関係のゆがみがある。その一因に首相官邸が省庁の幹部人事を握る内閣人事局の創設を挙げる声は多い。
 菅氏が言う省庁縦割りの打破が狙いだったが、官僚の職務は「結論ありき」に変質し、人事におびえる官僚の忖度がまん延した。その内実を最も知る菅氏が継承を強調するばかりであれば、ゆがみも温存されることにならないだろうか。
 むろん、直面する新型コロナウイルス対策や外交、安全保障、消費税と社会保障など論点は幅広い。
 安倍政治の何を継承し、何を転換するのか。国民にも明らかにする論戦を求める。

カテゴリー: 社説

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