2020.09.03 08:41

はっぴぃ魚ッチ じいちゃんとの漁は特別な時間 仁淀川でアユしゃくり漁

「よし! あれっ?」。楽しそうに漁をする片岡太星さん。自在に仕掛けを打ち込んでアユを掛ける
「よし! あれっ?」。楽しそうに漁をする片岡太星さん。自在に仕掛けを打ち込んでアユを掛ける

 泡立つ流れが、真夏の光と混じり合っている。旧仁淀村の仁淀川。2人の男性が胸まで水に漬かり、左手の「水鏡」で水中をのぞく。竿(さお)を持った右手が、ひっきりなしに動いている。
 
 アユの玉じゃくり漁。この地域伝統の漁をする人の中でも長老級の片岡一正(いっせい)さん(78)と、最年少級の片岡太星さん(20)。おじいと孫の師弟コンビだ。
 
 2・1メートルの先には、竿より少し長いナイロン糸。その先に丸い重りといかり針。この仕掛けを、繰り返し振り込んでアユを引っ掛ける。
 
 「よっし!」
 
 太星さんの竿がしなり、ぶるぶると震えるアユが水面に現れた。
 
 「めっちゃ太っちゅう。きょう調子いいわ~」
 
 太星さんは大阪府から帰省中の大学生。一正さんらの漁に幼少からあこがれ、大学1年の夏休みに仲間入りを果たした。新型コロナウイルスの影響で授業が休業となっていた今年6月には、父、龍也さん(50)を含む親子3代で出漁し、計130匹以上の大漁も経験した。

長者川が合流してすぐの仁淀川が2人のホームグラウンド
長者川が合流してすぐの仁淀川が2人のホームグラウンド
 
 師匠の一正さんは10年ほど前に長距離トラックの運転手を引退後、幼少の経験を頼りに漁を再開した。夏の間は、ほぼ毎日、川に入る。
 
 「アユとの駆け引きじゃね。直接見て、これと決めた魚と目を合わせて掛ける。目をそらせたら、魚は逃げる」
 
 漁が始まると顔はほとんど上げない。竿さばきは見とれる美しさだ。
 
 頭上を飛ぶ黄色い重りが完璧なタイミングで竿をしならせ、3メートルほど先の水面に音もなく吸い込まれる。仕掛けがアユを追い詰め、次々に捕らえていく。一正さんの右肩は、この反復動作が作ったしなやかな筋肉で包まれている。
 
 獲物は、太星さんのおばあちゃんが塩焼きや甘露煮に。お母さんは「ほっこりするねえ。いつまでも3人が川に行けるといいねえ」とウエットスーツを干してくれる。太星さんが20歳を迎え、アユを肴(さかな)に親子3代で酒も酌み交わしたという。
 地域の長老級漁師、片岡一正さん
地域の長老級漁師、片岡一正さん

 「若い人が漁をせんなった。孫が興味を持ってくれるのはうれしいねえ」と祖父。「一緒に漁をする時は特別で平和な時間」と孫。川の恵みが家族をつなげる。
 
 清流を照らす陽光が一段と強まった。
 
 「じいちゃん。向こうの岸寄りはどうやろ?」
 
 「さっきアユが向こうへ回った。やってみい」
 
 2人は黙々と、竿を振り続ける。(本紙・ハチ)

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カテゴリー: スポーツ高知の釣りスポーツ

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