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2020.08.30 08:00

【総括・安倍政治 1強の弊害】民主主義の根幹揺らぐ

 安倍晋三首相が退陣を表明した。憲政史上最長政権が間もなく幕引きになる。約7年8カ月に及んだ1強政治は何を残したのだろうか。
 首相は政権を奪還した2012年衆院選を含めて6回の国政選挙に連勝。これを力の源泉に安倍1強体制は強化されていった。
 経済政策アベノミクスは株価や雇用状況を改善し、自ら訴えたように旧民主党政権時代の「決められない政治」と決別した。自らの第1次政権の挫折から続いていた連年の首相交代という政治の混乱に終止符を打ったのは事実だろう。
 ただ、国会を軽視する強引な政治手法で、議会制民主主義の根幹を揺るがせ続けたのも1強政治の特徴である。
 目立ったのは自民、公明両与党の「数の力」による採決の強行だ。機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法、集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法などが成立した。
 野党の強い反対を押し切り、少数意見、異論の封殺が繰り返された。いずれも直前の国政選挙ではアベノミクスの成果を前面に出し、正面から国民に訴えたとはいえない政策である。
 審議を尽くすべき「言論の府」である国会はもちろん、慎重な審議を望む国民の合意形成もないがしろにされてきたのではないか。
 首相官邸の顔色をうかがう官僚の忖度(そんたく)もはびこり始めた。官邸が府省庁の幹部人事を握る内閣人事局の創設も影を落としている。
 深刻なのは、官僚による公文書の廃棄や改ざんの常態化だ。森友学園や桜を見る会などを巡る疑惑でも真相解明を困難にしている。公正な行政が行われたかどうか、後世の検証を妨げるのは民主主義の基盤を損なう行為である。
 政治の「責任」とは何かも考えさせる政権ではなかったか。
 森友、加計両学園問題などの疑惑で首相は「丁寧に説明する」と述べてきた。しかし、いずれも関与を否定しながら国会での説明を避ける姿勢が目立った。いまだに説明責任を果たしたとはいえない。 
 第2次内閣以降は「政治とカネ」の問題を中心に閣僚10人が辞任した。首相は「任命責任は私にある」と繰り返しながら、言葉だけで実際には責任を取る行動はなかった。
 1強政治の長期化には、離合集散を繰り返してきた野党の非力にも原因があろう。政権を任せるに足る社会像を持った対抗軸がなければ、緊張感のある国会は取り戻せまい。
 「政治をして国民道徳の最高水準たらしむる」ことを理想に掲げたのは、高知県が生んだ昭和初期の宰相、浜口雄幸である。
 自民党内で後継選びが本格化している。次期政権は1強政治を総括し、民主主義と政治の道徳を立て直すことから始めてもらいたい。

カテゴリー: 社説

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