2020.08.27 08:40

ただ今修業中 高知市保健師 山田玲香さん(33)高知市

「相手の気持ちに寄り添える保健師になりたい」と話す山田玲香さん(高知市万々)
「相手の気持ちに寄り添える保健師になりたい」と話す山田玲香さん(高知市万々)
母親らに、まず共感
 アパートの玄関前で、ふうっと息を整える。呼び鈴を押すと、ドアを開けたのは赤ちゃんを抱いた母親。名札を見せながら話し掛ける。周りを意識して少し小さく、でも明るい声で。

 「こんにちは。母子保健課の山田です。体調はどうですか」

 妊産婦や乳幼児担当の保健師だが、最初はこの仕事に就こうとは思ってもいなかった。

 医療ドラマと、白衣の天使という言葉に憧れ、高知大学医学部看護学科へ。卒業と同時に、高知市内の総合病院に看護師として就職した。

 担当した集中治療室で待っていたのは、めまぐるしい日々。患者の容体は刻々変わり、落ち着けば一般病棟へ。一方で、死とも隣り合わせ。そうして患者は激しく入れ替わる。

 それでも個々に寄り添いたかった。やがて「病気を予防できたら」「退院後の生活も支えないと」と感じ始めた。思いが「病院の外で、地域で支える仕事がしたい」と少し具体性を帯びた時、大学で保健師の資格も取っていたことを思い出した。

 高知市役所の募集を見つけ転職。4年前、28歳の時だ。

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 以来、母子保健課に在籍。家庭訪問を続けている。赤ちゃんの体重は増えているか。母親に産後うつの危険はないか。経済的に困っていないか。さまざまな視点から親子を支える。

 相手によって言葉を選ぶ。10代の若い妊婦にはフランクに、「出産まで一緒に準備しよう。何かあったらすぐ相談してね」

 落ち込んでいる人には、「何がしんどいですか? いつでも話、聞きます」。

 育児に頑張りすぎている母親には、「本当によく頑張っています。でも、自分のことも大事にしてほしい」。

 まず共感。対話を重ね、関係性を築く。ようやくどういう人か分かり、その人に合った支援策が提案できる。

 ただ、難しいケースもある。面会を拒否される。手紙を残しても電話が来ない。

 そんな時、思い出す人がいる。2年目で出会った母親。子どもに手をあげることもあった。2人目を妊娠していたが、産みたくないと言っていた。が、よく聞くと、パートナーから言葉の暴力があった。家を出たいが、生活は苦しい。心も不安定になっていた。

 彼女に、子どもと母子生活支援施設で暮らすことを提案。一緒に説明を聞きにいった。その後、施設での生活も落ち着き、悩みながらも出産を決意してくれた―。

 難しいケースの人も、いつかそんなふうに生活が変わってくれたら。粘り強く向き合う原動力になっている。

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 訪問の際、心掛けていることがある。母親たちを「お母さん」と呼ばない。自身も2児の母。出産後、周りが注目するのは子どもばかりで、自分を見てくれないと感じた。そんな実体験から、名前で呼ぶ。

 出身は沖縄県。大学入学で高知へやってきた。初めは環境にうまくなじめず、1年生が終わると1年間休学した。

 訪問する妊産婦も、周りに頼れる人がおらず、つながりをつくれずにいることが多い。あの頃の孤独な自分と重なる。

好きな言葉
好きな言葉
 人は、共感の素地をたくさん持っている。それをフルに生かす。

 「一緒に悩んで、笑って。同じ時間を過ごしながら支えたいんです」

  写真・新田祐也
  文 ・福井里実

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カテゴリー: 社会子育て高知中央社会

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