2020.08.25 08:40

厳重警戒の障害者施設でもクラスター コロナの教訓は

入所者の食事を手伝う施設職員(高知市春野町秋山のあじさい園)
入所者の食事を手伝う施設職員(高知市春野町秋山のあじさい園)
あじさい園(高知市)で感染 入院対応に課題も
 高知市春野町秋山の知的障害者支援施設「あじさい園」で8月発生した新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)は、職員が入所者と緊密に接しながら生活を支える福祉施設特有の難しさを浮き彫りにした。全国でも施設での集団感染が発生する中、入院などの対応は定まっておらず、今後に課題を残している。

 あじさい園には知的障害のある30~80代の45人が入所し、職員56人が勤務。8月15~19日、入所者11人と職員6人の感染が表面化した。

 園内では入所者の食事や入浴、トイレなどを職員が支える。声を掛けたり、体を支えたり。「ソーシャルディスタンスは不可能。1人でも感染すれば必ず広まる」(南守理事長)。入所者はストレスを感じるためマスクはしていない。

 感染防止を徹底するため、職員は休日の不必要な外出や外食を自粛。美容院を避けて職員同士で髪を切ったことも。職員が子どもの卒業式や葬儀に出席する場合は、2週間の特別有給休暇を取らせ、感染なしを確認した上で出勤させていた。

 「それでもウイルスは入ってきた」。15日の会見で南理事長は沈痛な表情を浮かべた。「『あじさい』で出るなら、他でも出かねない」。そう話す県内の福祉関係者もいる。

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 高知県は今回、感染した入所者11人を高知市の高知医療センターに入院させた。一見普通の対応に映るが、個別のケアが必要な障害者の場合は必ずしもそうではない。

 「他の病気でも『24時間の付き添いがないと入院させられない』と言われることも。ましてコロナだと…」。県内78事業所でつくる高知県知的障害者福祉協会の山崎隆顧問が指摘する。

 実際、千葉県の障害者福祉施設で3月以降に入所者と職員計91人の感染者が出たケースでは、重症者以外は施設に滞在。広島市の施設で4~5月に計58人が感染した際も同様の対応が取られた。

 「障害の特性上、慣れた施設で対応した方がいい」(広島市)という行政の判断。施設には感染していない入所者もおり、職員は防護服を着て対応した。千葉県の施設幹部は「感染への不安、負担は相当大きかった」と高知新聞の取材に振り返った。

 あじさい園での感染は、高知県知的障害者福祉協会がこうした例を踏まえ、県に病院での対応を要望していたさなかに起きた。

 高知医療センターの医師と看護師はあじさい園と毎日情報交換し、入所者一人一人の対応の留意点を細かく共有しながらケア。高知県知的障害者福祉協会は「本当にありがたかった」と謝意を示す。

 高知県健康政策部の家保英隆副部長は「病院に入院させ、経過を観察し、医学的評価を下すのが基本だ。病状が一変することもある」と述べ、「基本は入院」との姿勢を示す。

 ただ、今回は県内の感染者が少ない時期だったため入院が可能だった面もある。「千葉県のように施設で大勢の感染者が出れば、受け入れができない場合もある」という。

 高知県知的障害者福祉協会は感染の広がりやすい福祉施設の特殊性から、入所者がより早くPCR検査を受けられる態勢を求めている。山崎顧問は「今回の事例を検証し、入院の際は施設職員を派遣するなど、医療と福祉のより良い連携を県や病院と話し合いたい」と話した。(福田一昂)

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