2020.09.11 08:40

愛嬌いっぱい動物アート 圧倒的にカラフルでポップ


「普通」じゃなくていい、自分らしく
「絵はかけがえのない表現」 自閉症スペクトラムに向き合い描く独創世界
細やかな幾何学模様と独創的な色使いで表現された愛嬌(あいきょう)たっぷりな生き物たち。デザイン画のようにも、生物画のようにも見える動物アートに見入ってしまう。描いているのは、自閉症スペクトラムと向き合う27歳の女性。「感じたこと、伝えたいことを色に込めている。言葉に当てはめるのは難しいから、絵でお話ができたらいいな」。そんな思いで一枚一枚にペンを走らせている。

大阪市出身の内園明日美さん(高知市百石町2丁目)。アルコールマーカーペンで描く作品は、どれも色使いや線が楽しい。イルカにペンギン、ナポレオンフィッシュ、ハコフグ…。モチーフは大好きな動物たちで、印象に残っている表情を切り取り、水玉やしま、格子などの模様で構図を形づくっている。

色は生き物たちから着想する物語などに沿って、湧き出る感情を表現。緑色系は穏やかさや温かさ、黄色系はイライラや葛藤、紫は恐怖感や不安というように、気持ちを色に乗せている。実際とはかけ離れた幾何学的な線や斬新な色の作品は、おもちゃのような楽しさが漂い、それぞれの特徴を捉えた表情も愛らしい。

内園さんが描き始めたのは、4歳の時に描いた黄緑色のタヌキの絵が実家に残っていたから、たぶんそのころ。クレヨンや絵筆が紙の上を滑る感触が面白くて 「指で描いたり、ガーゼや割り箸を使うのも楽しかった」のを覚えている。

大きなヤギに抱きついて、にこにこ笑っていたように幼いころから動物が好きで、中でもお気に入りなのは水族館で出会ったイルカ。他人の表情を理解したり、目を見ることは苦手だが、イルカとだったら話ができる気がした。

高校生まで、そんな動物たちの絵を毎日描いていた。ただ、当時の絵は、自分の気持ちを「殴り書きしたようなもので、誰かに見せたいとも残そうとも思わなかった」と振り返る。「頭に浮かぶストーリーを思いながら、自分もその物語を旅するような感じ」で描いていたのは、感性が他人と大きく違うことがつらくて、絵の世界で感情を解き放っていたから。絵の中とは違って、劣等感や疎外感を感じる現実の世界で「戦わなければいけない。がんばれ」と言い聞かせながら捨てていたという。

その気持ちが変化したのは昨年。水族館の飼育員を夢見て進んだ高知大学を卒業後、生活に自信をなくして頼った医療機関で自閉症スペクトラム障害と診断されてからだった。そこで出会った主治医や作業療法士が、乗り越えるべきハードルだと思っていた自分の特性を「拒否するのではなく、少しずつ受け止めたらいいよ」と、絵や苦手な会話を認めてくれた。以来、「自分らしさにふたをするのをやめられたし、絵なら周りの人にも世界中の人にも見せられる。言葉よりつながっていけるかもしれない」と、多いときには1日3枚ほど描いては手元に残し始めた。

作品を見た周囲の人からも「元気になった」「こんな色の組み合わせ見たことない」と、新作も期待されるようになり、「作業療法士さんが私を変えてくれ、絵で表現することがかけがえのないものになった」。

毎日のように描き始めた作品を「生きものがいる場所で展示してみたい。見て楽しむ出張水族館ができたら」と、新しい目標もできた。「もし早くに自閉症と分かっていたら、普通というベールを必死にまとわなくてよかったのかもしれない。でも、そのままの自分を受け入れてくれる人たちにも出会えたし、つらかった分、これから夢や希望の種が詰まっている」。そう前を向きながら「何でもいいから『がんばろう』『やってみよう』と、絵を見た人に変化を起こせたら」とペンを握っている。(飯野浩和)











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