2020.08.10 08:00

【中国アプリ排除】日本は冷静に対応検討を

 米国のトランプ政権が「安全保障上の脅威だ」として、日本でも人気の「TikTok(ティックトック)」など、中国企業が提供しているアプリの「排除」に動いている。
 利用している人の個人情報が中国政府に渡り、悪用されることを警戒しているためだ。
 同盟国に同調を求めており、日本も対応を迫られそうだ。国内で支持されているアプリであり、「排除」は利用者の混乱を招きかねない。
 背景には、あらゆる分野で激化している米中対立がある。日本政府は情勢を見極めながら、冷静に対応を検討しなければならない。
 TikTokは短い動画が手軽に楽しめるアプリだ。例えばダンス動画を編集して投稿したり、動物や赤ちゃんのかわいいしぐさを視聴したりすることができる。
 累計ダウンロード数は20億回以上に上るといい、世界で普及した初めての中国発ソーシャルメディアともいわれている。
 そのTikTokを巡り、トランプ政権は米国事業を米企業に売却するように求めている。米マイクロソフトが買収交渉中だが、決裂すればアプリの利用を禁止する構えだ。
 さらに6日、TikTokと通信アプリ「微信(ウェイシン)(英語名WeChat)」について、運営している中国企業との取引を45日後から禁止するという大統領令も出した。
 TikTok側は「中国政府に利用者のデータを提供したことはないし、求められても提供しない」と反論している。
 しかし、その言葉を疑ってしまうような状況があることは確かだ。
 中国では、2017年に国家情報法が施行され、民間企業や個人に情報活動への協力が義務付けられた。
 当局に命令されれば、企業は持っている情報を出さざるを得ない。
 国内ではインターネットの閲覧を規制し、検閲や監視を強めている。
 当局による情報収集と情報統制。一党独裁を守るための姿勢が変わらない限り、中国企業はスパイ活動を疑われ、中国の製品やサービスは世界標準になれないだろう。
 日本でも懸念が広がっている。
 中国企業が手掛けるアプリについて、自民党の議員連盟が政府に利用制限を提言する方針を固めた。
 埼玉県、大阪府、神戸市などの自治体が次々と、TikTokの公式アカウントの利用を停止している。
 ただ、アジア圏の日本では、米国以上に中国系アプリが普及している。TikTokは企業やアイドルグループが活用してきた。微信はビジネスで中国との連絡手段としてよく使われている。
 「排除」は経済的な影響も大きい。実際にアプリにどんな危険性があるのか。国内の利用者が納得できるような説明が求められる。
 米国も排除を主張するなら、中国に問題解決を迫れるような「根拠」を示すべきだ。強硬姿勢を見せるだけでは、対立の緊張を高め、世界経済に悪影響を与えるだろう。

カテゴリー: 社説

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