2020.08.05 08:00

【元徴用工訴訟】日韓対話で解決の糸口を

 韓国の元徴用工訴訟を巡り、被告の日本企業の資産売却手続きが新たな段階に入った。
 日本製鉄(旧新日鉄住金)の韓国内にある資産について、韓国の地裁支部が出した差し押さえ命令決定などの書類を同社が受け取ったと見なされる「公示送達」の効力が4日に発生した。
 これにより地裁支部は、原告の元徴用工側が求める資産の「売却命令」を出す検討に入る見通しだ。日本製鉄が期限内に即時抗告しなければ差し押さえが確定するが、同社は抗告するという。
 両国は1965年の国交正常化に当たり請求権協定を結んでいる。韓国が植民地時代の補償を放棄する代わりに、日本が計5億ドルを供与する内容だ。両国と国民間の請求権問題などは「完全かつ最終的に解決された」と協定に明記された。
 だが、2018年の元徴用工訴訟で韓国最高裁は新日鉄住金に賠償を命じた確定判決を出した。個人請求権は消滅していないとの判断だ。
 韓国の歴代政権は、徴用工の個人請求権がこの協定に含まれると認めてきた。だが、文在寅(ムンジェイン)大統領は「司法判断を尊重する」とし、日韓対立は先鋭化した。
 日本は、企業の資産を売却して現金化するのは「国際法違反」で容認できないと警告している。仮に日本企業に「実害」が発生した場合は、査証(ビザ)発給条件の厳格化や駐韓大使の一時帰国、韓国製品への追加関税といった報復措置を検討しているとされる。
 韓国側も、日本の措置に対抗する構えを見せている。そうなれば、非難合戦や報復の連鎖がさらにエスカレートするのは明らかだ。
 日韓両国は民間交流や貿易面でつながりが深く、北朝鮮問題でも協力・結束し合わねばならない関係にある。しかし、この問題をきっかけに戦後最悪とされるまで冷え込んでしまった。
 日本が昨年夏、軍事転用の恐れがあるとして半導体材料の韓国への輸出規制を強化すると、日本製品の不買運動が起こった。
 韓国は世界貿易機関(WTO)にこの問題を提訴し、紛争処理の組織が設けられた。ただ、日韓が互いに妥協点を探らない限り、紛争が長引くのは必至だ。
 韓国政府が昨年破棄を通告して直前で撤回した日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA(ジーソミア))も心配だ。延長の是非を判断する期限が今月下旬に迫っている。これも日韓での十分な話し合いを求めたい。
 日本政府は、元徴用工問題の解決策を韓国側に示すよう求めているが、対話がなければ関係修復の糸口は探れない。安倍晋三首相と文氏が昨年12月に会談してから半年以上がたつ。関係がさらに悪化すれば、両国民の利益のみならず、東アジアの安全保障面でもマイナスとなる。
 両首脳が直接会うのはコロナ禍で難しいとしても、オンラインなど対話の場を早急に設けるべきだ。

カテゴリー: 社説

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