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2020.07.28 08:00

【米中の公館閉鎖】制御不能になっては遅い

 香港問題や新型コロナウイルス対応を巡って激しく対立している米国と中国が、互いに在外公館を閉鎖させる異例の事態となった。
 大国同士の報復の連鎖がエスカレートすれば、制御不能な不測の事態に陥りかねない。東アジア地域の安全保障上の観点からも非常に憂慮すべき状況だ。
 ウイルス収束の見通しが立たない中、世界経済の落ち込みは激しい。貿易摩擦で米中は対立してきたが、コロナ禍後を見据えて経済をどう立て直していくのか。世界経済をけん引すべき両国がいがみ合ったままでは明るい展望は開けない。
 テキサス州ヒューストンの中国総領事館に閉鎖命令を出した米国務省は、その理由を「米国人の知的財産権と個人情報を守るため」としている。中国も対抗し、四川省成都の米国総領事館が「内政干渉した」などとして閉鎖した。
 今回閉鎖された館を含めて両国は総領事館をそれぞれの主要都市5カ所に置いている。各館は現地での情報収集や査証(ビザ)の発給手続きなどを行う。それだけでなく、民間交流の窓口なども普通は担っており、館閉鎖の影響は非常に大きい。
 ヒューストンの総領事館の閉鎖を求めたポンペオ米国務長官は、習近平国家主席を「全体主義の信奉者」と非難し、中国の猛反発を買った。
 中国による香港国家安全維持法の施行でも両国の対立は激しさを増していた。中国の覇権に対抗するためポンペオ氏は、北大西洋条約機構(NATO)や先進7カ国(G7)などが経済や外交、軍事力を結集させるべきだとも強調した。
 香港に対する中国の強権的な姿勢は、国際社会による監視がむろん必要だ。しかし、中国との対立をことさらあおるような米国の姿勢は危ういと言わざるを得ない。
 米国による対中強硬策の背景には、11月に迫った大統領選があるのは明らかだ。
 再選を狙うトランプ氏は新型コロナの初期対応の誤りを、野党民主党の大統領候補指名が確実なバイデン前副大統領らから批判されている。
 事実、感染者数、死者ともに米国は世界で深刻な状況だ。感染者の増加ペースはまだ加速しており、医療態勢が逼迫(ひっぱく)した地域もある。
 トランプ氏は失策の矛先をそらすため、新型コロナを「中国ウイルス」と呼ぶなど中国の非難を繰り返してきた。それでも支持率でバイデン氏に水をあけられた地域もある。
 中国の総領事館があったテキサス州は共和党の地盤が強い保守的な土地柄だ。閉鎖命令は、支持率低迷に悩むトランプ氏側が保守層に向けた「演出」との見方がある。
 南シナ海の広いエリアの海洋資源権益を主張する中国と、それに反発する米国は、大規模な軍事演習を互いに行うなど日本の近海でも対立は激化している。
 これ以上、対立がエスカレートしないよう、日本を含めた国際社会が両国に自制を強く働き掛けたい。

カテゴリー: 社説

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