2020.07.12 08:00

【流域治水】水害に強い地域づくりを

 「数十年に一度」の記録的な大雨が頻発している。堤防やダムの整備に頼るだけでは、河川の氾濫から地域を守れなくなっている。
 そうした中、国土交通省が防災・減災総合対策を公表し、「流域治水」への転換を打ち出した。
 河川を管理している行政中心だった治水の在り方を見直す。企業や住民も参画する形で、地域の特性に応じた治水対策を進める。
 住民も行政任せの意識から脱却し、水害に強い地域づくりに参加していく必要がある。
 転換は「気候変動による水災害リスクの増大に備えるため」だ。河川の氾濫は急増している。
 全国で氾濫危険水位を超過した河川数を見ると、2014年は83だったのが、17年以降は3年連続で400を超えている。
 国交省の防災・減災総合対策では、治水に向けてハード、ソフト両面の施策がさまざま示された。
 例えば河川の氾濫をできるだけ防ぐため、雨水貯留浸透施設を整備し、田んぼやため池などの貯水機能も活用する。
 農業や発電のための利水ダムも活用する。大雨の前に「事前放流」を行い、水位を下げて雨をせき止める容量を増やしておく。
 人々の住み方や土地利用についても踏み込んでいる。土砂災害などの危険がある地域では開発を規制し、住宅移転も促進させる。
 実際にリスクの高い土地が宅地開発され、大規模な土砂災害が起きた例もある。ただ、住宅の移転は容易ではない。補償の必要性も考えられる。減災のためにどこまで踏み込めるのか。国交省には十分な説明が求められる。
 また全国109の1級水系では「流域治水プロジェクト」を本年度中に策定する。県内では物部川、仁淀川、四万十川が対象になる。
 各水系で戦後に起きた最大級の洪水規模を想定し、堤防強化などのハード対策を急ぐ。災害時に行政や住民が取るべき行動を時系列でまとめた「タイムライン」の作成などのソフト対策も進める。
 九州豪雨によって、既に課題も浮上している。氾濫した熊本県の球磨川水系では、国交省が「流域治水」を先駆的に進めてきた。
 流域の多くの自治体はタイムラインを作成していた。しかし住民への周知が不足し、発生が未明だったことも重なって、避難はうまく進まなかった。
 ダムの事前放流も実施できるはずだったが、「想定外の雨量が短時間で降ったため、猶予がなかった」(国交省担当者)として実行されていない。
 国交省はこれらの原因を詳しく検証し、全国の「流域治水」の取り組みに反映させる必要がある。
 九州豪雨の被害に心が痛む。高知県でも起きかねない災害である。
 いかに命を守るか。日頃から防災・減災の行動を意識し、地域の被害を最小限に食い止めたい。

カテゴリー: 社説

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