2020.07.05 08:00

【ロシア憲法改正】プーチン帝国が続くのか

 プーチン大統領の長期続投を可能にしたり、領土の割譲を禁止したりする条項を盛り込んだロシア憲法改正案が国民の全国投票で承認され、4日発効した。
 現在67歳、通算4期目のプーチン氏は、従来の憲法の規定では2024年で退任することになっていた。
 改憲によって大統領の任期は2期までと制限される一方、「現職」は適用しない例外条項が設けられた。それによってプーチン氏は最長36年まで続投できるようになる。
 プーチン氏は首相時代を含めて実質20年間、トップに君臨している。
 14年にはウクライナ南部のクリミア半島を強引に編入する「力による現状変更」を行い国際社会から強く非難された。国内でも反体制勢力への統制を強化するなど強権的な姿勢が目立っている。
 プーチン氏が24年の大統領選に出馬するかどうかは分からない。だが、投票前には「出馬の可能性も排除しない」と発言している。出馬しなくても息のかかった後継者を探して「院政」を敷くとの指摘がある。
 野党や反体制勢力は、改憲は事実上、「プーチン氏の終身大統領化」だと批判している。国内外で強権的な姿勢が目立つ「プーチン帝国」が続けば世界は不安定さを増すだろう。憂慮せざるを得ない。
 改憲条項は、年金や社会保障費を物価変動に応じて改定したり、動物愛護措置を実施したりするなど多岐にわたっている。
 中でもプーチン氏の「続投条項」は重要だが、政権が影響力を持つ国営テレビは、その条項に触れなかった。野党や反体制勢力は主要メディアを通じた発信が制限されている。
 ロシアでは近年、国民の経済格差が広がり、政権の支持率は低下傾向にある。ここにきて新型コロナウイルスや原油価格の急落などで経済が急激に悪化し、政権への不満がさらに高まる恐れがあった。
 そうした状況から、「続投」を国民に詳しく知らせたくなかったのかもしれない。全国投票では8割近くが憲法改正に賛成したが、投票自体の公正公平性に疑問が残る。
 改憲条項には、懸念材料がほかにもある。
 国際条約に基づく国際機関の決定が、ロシア憲法と矛盾した場合は無効とするよう規定している。
 言論や報道の自由、人権問題を巡って国際機関から批判された場合の「先手」を打ったとの見方がある。そもそも排外主義的な姿勢を憲法で示す必要があるのだろうか。
 日本に深く関係するのは領土割譲の禁止条項だ。「隣接国との国境画定」は例外としたものの、愛国的で保守的な価値観が前面に出ている。
 日本の北方領土返還要求を拒否する根拠を得たとするロシア極東の知事がいる。先が見通せない交渉がさらに膠着(こうちゃく)する恐れがある。
 安倍政権はプーチン氏と交渉を長く続けてきた。この禁止条項が交渉にどう影響するのか。早急に見極めて国民に説明する必要がある。

カテゴリー: 社説

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