2020.07.04 08:00

【ため池の決壊】地域で危険性の認識を

 西日本豪雨からまもなく2年になる。今年も豪雨災害が起こりやすい季節を迎えた。地域の防災を考える上で、老朽化した農業用ため池が決壊する危険性を知っておきたい。
 農業用ため池は、高知県内の29市町村に現在391カ所ある。そのうち228カ所が「防災重点ため池」に選定されている。決壊した場合、浸水想定区域に民家や公共施設があり、人的被害の恐れがあるため池だ。
 県は、堤を厚くするなどの改修工事を加速させているが、整備には一定の時間がかかる。
 ため池決壊の危険性は、津波や土砂災害のようには認識されていない。住民はまず、ため池の場所を知り、万一の場合にどう避難するかを考えておく必要がある。
 2018年7月の西日本豪雨では、老朽化した農業用ため池の決壊が相次いだ。2府4県の計32カ所で起こり、広島県福山市では3歳の女の子が家ごと流され亡くなった。
 農業用ため池は江戸時代に造られたものが多く、堤の経年劣化が進んでいる。農家の高齢化などで管理する人手も足りなくなっている。
 国は西日本豪雨を踏まえ、昨年7月に農業用ため池管理・保全法を施行。自治体による管理の強化と、決壊に備えたハザードマップ(被害予測地図)の作成も求めた。
 高知県でも、防災重点ため池を選定し直し、従来の121カ所から100カ所以上も増やした経緯がある。
 その改修工事を進め、2019年度までに15カ所で終えた。2020年度は15億4700万円を予算化し、室戸市や四万十市など10市町村14カ所の完了を目指している。
 この問題は、南海トラフ地震への備えとしても考えなければならない。液状化現象でため池が壊れる恐れがあるためだ。
 2011年の東日本大震災では、福島県須賀川市のため池が決壊し、下流の集落を巻き込んだ「山津波」によって、住民8人が犠牲になった。
 専門家は、高知県のため池も「古くは江戸時代から築造され、ほとんど耐震性能がない」としており、その耐震化が急がれる。
 そして、古くからあるため池は「住民の生活空間から見えない場所にある」という。農業用水を使う人以外に意識されない。新しく移り住んだ人や、ため池がある山地から下った地域に住む人は、存在さえ全く知らない場合もあるだろう。
 まず、自宅の近くや職場、学校といった行動範囲に、防災重点ため池があるかどうかを確認したい。高知県はウェブサイトで、その場所や浸水想定区域を公表している
 浸水に阻まれる可能性があるならば、これまで考えていた地震時の避難ルートや避難場所についても再検討する必要がある。
 市町村も県の想定を基に、ハザードマップの作成を進めている。
 命を守るため、ため池の防災に総合的に取り組む時だろう。市町村や地域の自主防災組織はまず、住民への危険性の周知に努めてほしい。

カテゴリー: 社説

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