2020.07.01 08:00

【香港安全法】自治後退への「一里塚」

 民主主義後退への歴史的な「一里塚」となる恐れがある。
 中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)の常務委員会が、香港国家安全維持法案を全会一致で可決、成立した。
 高度の自治や司法の独立を認めた「一国二制度」を形骸化させかねない。国際社会の懸念や反対に耳を貸さず強行した中国には、失望を禁じ得ない。
 香港返還から23年。国家安全維持法は施行された。言論の自由などが抑圧されないよう、国際社会がより一層注視していく必要がある。
 香港では2019年、中国への容疑者引き渡しを可能とする逃亡犯条例改正反対など、民主化を求めるデモが活発化。これを抑え込み統制を強化するため習近平指導部は、香港への国家安全法制の導入を決めた。
 国家安全維持法はその柱で、国家分裂や政権転覆、外国勢力の干渉などを処罰する。香港に中国政府の出先機関を置き治安維持を担う。
 英国から中国への香港返還を決めた中英共同宣言では1997年の返還から50年間、香港では資本主義を継続し言論、集会の自由など民主主義を保障するとした。しかし安全法制により今後は共産党や政府に批判的な活動が、犯罪行為として取り締まられる可能性がある。
 国際社会の非難に対し、中国は「内政干渉だ」とするがそれは当たらない。中英共同宣言は国際条約の形で結ばれている。それを一方的に破るようでは、「国際公約」違反と言われても仕方ない。
 中国側は香港での抗議デモを、国際経済都市としての地位を低下させる要因と捉えているようだが、それも違う。50年たたないうちに一国二制度の約束をほごにする。その方がよほど中国の国際的地位を低下させよう。
 内政問題だと言いながら安全法制を制定するのは全人代であり、香港の立法会(議会)が手続きに関与する余地はない。反対の声を上げる香港市民や学生らと話し合う姿勢もない。
 香港のありようを大きく変える法制にもかかわらず、「主役」抜きで推し進めようとする。理解など得られるはずがない。
 国際金融センターとして発展してきた香港は、中国にとっても「金の卵を生むガチョウ」だったはずだ。統制強化でその首を絞めるようなことをすれば、弊害は中国に跳ね返ってくる。
 米国は香港に認めてきた優遇措置の一部を終わらせ、軍民両用技術の輸出を中国本土同様に制限する。関税やビザ(査証)の特別優遇措置の廃止手続きも始める。中国は反発しており、米中の対立激化が想定される。そうなれば世界経済への一層の悪影響も避けられない。
 中国は少なくとも香港返還に当たって約束した2047年までは、一国二制度を堅持すべきだ。それが香港の安定と国際社会の信頼を取り戻す唯一の道である。

カテゴリー: 社説

ページトップへ