2020.06.28 08:45

音響式信号うるさい? 県内 住民苦情で停止も 視覚障害者ら「理解を」【なるほど!こうち取材班】

 「カッコー、カッコー」。視覚障害者らが交通事故に遭わないよう「青」の時に誘導音が鳴る音響式信号機。県内では、県警が年に5、6基のペースで整備を進めているが、住民から「うるさい」と苦情が寄せられ、誘導音を消したり、音量を下げたりする事例が起きている。「命に関わる問題。近隣の皆さんに理解してもらいたい」。視覚障害者らの訴えは切実だ。

音響式信号機の誘導音が消えた横断歩道を渡る視覚障害者の宮脇忠支さん(高知市幸町)
音響式信号機の誘導音が消えた横断歩道を渡る視覚障害者の宮脇忠支さん(高知市幸町)
 音響式信号の誘導音は、横断歩道が南北なら「ピヨ、ピヨ」、東西なら「カッコー」。4月末現在、県内の信号機1503基のうち239基(15・9%)に整備されている。

 県視覚障害者協会によると、無音の信号機の場合、視覚障害者は停止車両のアイドリング音などを頼りに、自分が渡ろうとする交差点が「青か赤か」を判断している。

 しかし信号がまもなく赤に変わるかどうかは分かりづらく、点滅時でも周囲の横断者につられて渡ってしまうこともあるという。

 片岡義雄会長は「音響式だと点滅時は音が止まる。だから鳴っているうちは青だとはっきり分かり、安心して横断できる」とする。

 ところが、2018年に高知市内でこんなことが起きた。

 2月、県警が同市幸町にある交差点の信号機を音響式に切り替えると、近隣住民から「やかましい」「うるさくて家族に精神的被害が出ている」と苦情が寄せられた。

 県警は住民側と協議したものの理解を得られず、最終的には「交通弱者を守りたいが、住民の生活も侵害できない」と判断。4月に誘導音を消したという。

 周辺は、朝の通勤時間帯に信号待ちの車や自転車で混雑する。近くに住む視覚障害者の宮脇忠支(ただし)さん(80)は「白杖(はくじょう)をついて週に3日は交差点を渡る。住民が言うなら仕方ないが、車や自転車にぶつかったらと思うと怖い」と訴える。

 ■ ■ 

 同年3月には、同市神田で横断歩道の信号機が音響式に切り替えられた。

 すると翌日、近隣住民から「音を下げて」との声が出た。県警が音量を下げると、今度は近隣の視覚障害者から「これでは音があってもなくても変わらない。もっと大きくして」との相談があり、再び音量を上げた。

 音響式は50~110デシベルの範囲で音量を調節できる。神田の場合は当初77デシベル(航空機内に相当)。住民要望で63デシベル(ファミリーレストランの店内に相当)に下げ、今は70デシベル(バス車内に相当)に設定している。

 音量を上げるよう訴えた岡村喜八郎さん(84)は「また音が聞こえるようになったので、安心して横断歩道を渡れる」。一方、住民側には「私たちにも生活がある。家中に音が聞こえて気になる。耐えきれない」と不満が残っている。

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 警察庁は全国で音響式の整備を促進しているが、日本視覚障害者団体連合は「近隣の苦情もあって思うように進んでいない。誘導音が消されたり、小さくされたりするのは全国共通の問題」と指摘する。全国の信号機に占める音響式の割合は9・6%(19年3月末)にとどまる。

 県警は、近隣から苦情が出た場合、住民立ち会いの下で音量を調整する考えで、「互いに納得してもらえる折衷案を探したい」(交通規制課)とする。苦情で誘導音を消したケースは幸町の1件だけだが、住民側が強く「ノー」と言えば覆せないのが現状だ。

 「住民の生活を守りつつ、視覚障害者が安全に横断歩道を渡れる方法はないものか…」。県視覚障害者協会の片岡会長は頭を悩ませている。(乙井康弘)

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