2020.06.25 08:00

【接触確認アプリ】国民の不安を取り除け

 新型コロナウイルスの感染者と濃厚接触した可能性がある場合に、スマートフォンにその通知が届く政府の「接触確認アプリ」の運用が始まった。
 運用開始日は、都道府県境をまたぐ移動の自粛要請が解除された19日だ。第2波の襲来が懸念される中、政府は国民のアプリ利用を期待しているだろう。
 ただし、感染拡大防止にアプリが効果を上げるには、国民の6割以上の利用が必要とする研究がある。
 厚生労働省によると、23日午前時点のダウンロードは300万件以上という。一方でプライバシーの面から利用を不安視したり、ためらったりする国民は少なくない。アプリの不具合も早々に見つかっている。
 どんな方法で具体的に利用者のプライバシーを守るのか。不安を払拭(ふっしょく)するには、もっと分かりやすく仕組みなどを説明する必要がある。
 中でも、情報機器に詳しくないお年寄りらに機能を理解してもらうには、丁寧な説明は欠かせない。その努力なしに「利用者6割以上」というハードルを越えるのは難しい。
 厚労省によると、アプリはスマホに搭載された近距離無線通信「ブルートゥース」を活用する。
 アプリを取得した人同士が1メートル以内に15分以上いると、互いのスマホに接触した記録が残る。記録は数字などを無作為に組み合わせた符号の形で残される。
 その後、新型コロナの陽性になった人がアプリに登録すると、2週間以内に接触記録があった人のスマホに「陽性者との接触確認」と通知されるという。
 肝心なプライバシーの配慮について政府は、衛星利用測位システム(GPS)による位置情報やアプリ利用者の氏名、携帯番号などは収集しないとする。スマホに残る記録は接触相手の符号に限られ、それも一定期間後に消去される。
 しかし、こうした厚労省の説明を聞いても「行動が監視されている」と、漠然とした不安を感じる国民は少なくないだろう。匿名化された情報も他のさまざまな情報と結びつくことでプライバシーが侵害される可能性が否定できないからだ。
 たとえば、封じ込めに一定の成果を上げたとされる韓国では、新型コロナの隔離対象者が指定場所から離れた場合に把握できるアプリを政府が導入した。スマホの位置情報などが使われたという。
 仕組みや機能が日本のアプリと違うとはいえ、こうした例は監視社会への強い懸念を国民に抱かせる。効果が出るとされる「6割以上」に利用者を増やすには、メリットがもっと理解されなければならない。
 コロナ禍が終息すれば、アプリ使用を速やかにやめると政府は説明している。監視社会への不安を国民に広げないためにも約束はきっちり守ってもらいたい。それとともに、感染者の把握にこのアプリがどう役立っているのか。定期的に国民に報告する必要がある。

カテゴリー: 社説

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