2020.06.21 08:00

【国会召集訴訟】憲法上の義務を直視せよ

 憲法53条に基づく臨時国会の召集要求を受けた場合、内閣は召集すべき義務がある。応じなければ、違憲と評価される余地はある―。司法が53条の趣旨を明確にしたことにこそ重い意味がある判決だ。
 安倍内閣が2017年、臨時国会の召集要求に約3カ月応じなかったのは違憲だとして、沖縄県選出の野党の国会議員や元議員が国に損害賠償を求めた訴訟の判決が那覇地裁であった。
 憲法53条は、衆参両院いずれかの4分の1以上の議員が要求すれば、内閣は臨時国会の召集を決定しなければならないと規定している。召集までの期間は示していない。
 野党はこれを根拠として17年6月22日、森友・加計学園を巡る問題を解明するため臨時国会の召集を求めた。ところが、安倍内閣はこの要求を放置したあげく、98日後に開いた臨時会の冒頭に衆院を解散。審議を拒絶した格好だ。
 長期にわたって要求を放置したことには、憲法学者らからも「違憲」と批判する声が噴き出した。自民党は12年に発表した改憲草案で要求から召集までの期間を「20日以内」と明示している。その自己矛盾が疑問視されたのも当然だろう。
 判決は、「賠償で埋め合わされるものではない」として議員側の訴えを退けた。賠償請求権が認められないことから、違憲かどうかの判断は示さなかった。 
 ただし、安倍内閣の対応が正当だと認めた判決内容ではない。
 国側は、臨時国会の召集は「高度に政治性のある行為」で、裁判所の審査権は及ばないとして請求棄却を求めていた。 
 これに対し判決では、53条の趣旨について、召集は単なる政治的義務ではなく憲法で規定された法的義務で、召集時期の内閣の裁量も大きくないとした。また、少数派の国会議員の意見を国会に反映させる趣旨があるとも指摘している。 
 政治判断に司法は口を出すな、といわんばかりの国の主張も退けている。内閣が義務を履行しなければ国会と内閣の均衡や抑制が損なわれる恐れがあるとし、司法審査の対象とする必要性が高いとした。
 とはいえ、ここまで指摘しておきながら、安倍内閣の対応の是非についての判断を避けた判決は、物足りなさを拭えない。三権分立における国会と内閣の抑制と均衡を指摘するのならば、司法としてももっと踏み込むべきではないか。
 菅義偉官房長官は判決を受け「国の主張が認められた」と述べている。損害賠償請求という都合のいい部分だけに目を向けていないか。「憲法上の義務」という指摘こそ直視し、重く受け止めるべきだ。
 通常国会は閉幕したが、新型コロナウイルス対策はもちろん、数々の疑惑など論点は多い。野党が臨時国会の召集を求めた場合、安倍内閣は「憲法上の義務」を順守すべきである。積み重ねてきた国会軽視の姿勢は改めなければならない。

カテゴリー: 社説

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