2020.06.18 08:00

【南北関係の緊張】対話路線を断絶させるな

 北朝鮮が南西部の開城(ケソン)工業団地で、韓国との南北融和の象徴である共同連絡事務所を爆破した。
 また朝鮮人民軍総参謀部は、韓国と対峙(たいじ)する前線部隊の態勢を増強し、開城工業団地と南東部の金剛山(クムガンサン)観光地区に部隊を展開する行動計画を発表した。
 連絡事務所の爆破は韓国に事前に警告があったとはいえ、2000年に開かれた、初の南北首脳会談以来の対話路線を壊しかねない強硬策だ。前線部隊が展開すれば軍事的な緊張が高まる恐れがある。
 まず北朝鮮は無用な挑発をこれ以上エスカレートさせず、韓国も冷静な対処に努めてほしい。両国は20年前の原点に立ち戻り、対話路線を断絶させてはならない。
 北朝鮮はなぜ、これほどの挑発行為に打って出たのか。韓国の脱北者団体が、北朝鮮の体制を批判するビラを散布したことへの報復だとするが、ビラ散布は以前から行われており、口実にすぎまい。
 原因は北朝鮮の内政・外交面での行き詰まりにあるとみる向きは多い。経済面では17年、弾道ミサイル発射や核実験を強行して国連が制裁を強化。外貨収入源である石炭や海産物の輸出を禁じられた。
 さらに新型コロナウイルス対策で、今年1月末から中国との国境を封鎖した。中朝貿易は前年比1割以下に激減し、国民生活の窮状も伝えられる。
 外交面では2018年に米国のトランプ大統領と史上初の米朝首脳会談を実施したが、その後、米朝非核化協議は難航し、頓挫した。トランプ氏は11月の米大統領選まで5カ月を切り、関心は内政に向かうことが予想される。
 金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は、自らの外交の成果を国民に示せない状態が続いている。一方、韓国の文在寅(ムンジェイン)政権も北朝鮮と経済協力事業の推進で合意に達したものの、米国の反対で実現できずにいる。
 こうした状況下で、北朝鮮が態度を硬化させた背景に、文政権に対する不満と、南北関係の緊張を高めることで国内の批判を外部に向け、内部結束を図ろうという狙いも指摘されている。
 北朝鮮では今年に入り、正恩氏が公開の場に姿を見せる場面がめっきり少なくなり、代わって実の妹、金与正(キムヨジョン)朝鮮労働党第1副部長の存在感が増している。事実上のナンバー2への実績づくりだろうか。
 「対南事業を総括」する責任者という立場とされるが、政治の表舞台に立った経験は浅い。韓国への「報復」を警告する数々の言動の過激さも気がかりだ。
 韓国政府内では、与正氏の談話などに対して批判が高まっている。いずれにしても、南北がいがみ合って双方に良いことは生まれない。偶発的な出来事から大きな事態に発展するリスクもある。
 言うまでもなく、朝鮮半島情勢を安定化に向かわせるには、日米韓の相互協力、情報交換が重要だ。

カテゴリー: 社説

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