2020.06.17 08:00

【地上イージス】白紙撤回して検証せよ

 秋田、山口両県で進められてきた地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の導入について、河野太郎防衛相が計画を停止すると表明した。
 迎撃ミサイルを発射した後、ブースター部分を自衛隊演習場内などに確実に落とせず、安全確保が難しいことが分かったためという。
 問題が判明した計画について、いったん立ち止まって見直すこと自体は評価できる。とはいえ「住民の安全・安心に支障はない」と言い続けてきた国の主張は何だったのか。
 突然の方針転換に至った経緯について、国民への説明責任を果たすよう求める。
 ブースターは打ち上げ時の加速用エンジンとなった後、上空で切り離される。イージス・アショア配備候補地には、近くに住宅地や学校などがあるケースもあった。ブースターの落下場所を制御できなければ、住宅地に落ちて大きな被害が出る恐れもある。
 防衛省は、安全な場所に落とすためには抜本的な改修が必要だということが5月下旬に分かったと説明する。それが事実なら住民の命を守れるかどうかを詰めないまま、計画を進めてきたことになる。到底許されない。
 そもそも地上イージスで弾道ミサイルを迎撃できるのか。そんな根本的な疑問もつきまとってきた。
 弾道ミサイルは音速より速く、弾丸で弾丸を撃ち落とすより難しいとされる。その上、政府が警戒する北朝鮮や中国はミサイル技術の進歩が著しい。地上イージスでは対応できず、「導入しても意味がない」と指摘する専門家もいる。
 にもかかわらず安倍政権は、主要な防衛政策として地上イージスに固執し続けた。見通しの甘さに対する責任が問われよう。
 地上イージスは安倍晋三首相がトランプ米大統領の要求に応じて、米国からの調達が決まったとの見方も根強くある。提示された価格を受け入れる「対外有償軍事援助(FMS)」制度に基づくため、防衛費は膨らむ。配備予定だった2基の経費も4千億円以上に上る。
 新型コロナウイルス対策予算が増え続ける現在、防衛装備品といえども「不要不急」の買い物に巨額の予算はつぎ込めない。その意味でも計画停止は当然だ。地元はもとより国民の理解も得られていない以上、白紙撤回するべきである。
 一方で、北朝鮮のミサイルの脅威などにどう対処していくか。河野氏は「当面はイージス艦でミサイル防衛体制を維持する」とする。安全保障は軍事だけに頼るのではなく、政治や外交など総合的な取り組みで実現しなければならない。
 政府、与党は国会をきょう閉じる方針だ。その直前まで計画停止を明らかにしなかったのは、不自然極まりない。地上イージス計画停止を検証し、今後の安全保障のあり方について議論するためにも、会期の延長を改めて求める。

カテゴリー: 社説

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