2020.06.10 08:38
虚ろな税 奈半利事件の実相(3)高揚 えいぞ、どんどん行け
奈半利町は戦後、林業と製糸業が基幹産業だったが、お決まりのように安価な外国産に押されていく。1971年に役場入りした斉藤は、衰退する町で産業振興などの事業畑を主に歩んできた。
温州ミカン、イチジク、ヤマモモ―。国や県の補助金をてこに何度か地場産品の開発を試みた。「けんど、いかんき。なんぼ町が奨励したち、出口(販売先)がなけりゃ農家もやらん」と斉藤。町の将来を懸けた「平成の大合併」も、近隣自治体間の合意に至らず2005年に頓挫した。
戦後7千人いた人口は半減し、奈半利町単独で使える公費は年1億円弱。地方交付税に頼りきった構造に「田舎はただ口をあけて、交付税もろうて生活すりゃえいがか」との思いが募った。
地域の課題に自分たちで向き合える財源が欲しい―。そんな斉藤の願いを、2008年度に始まったふるさと納税がかなえ始めた。…