2020.06.02 08:38

高知県内の小中学校林7割超が「遊休」 林業人材不足

学校林で除間伐を体験する東又小学校の児童(2019年12月、四万十町黒石)
活用17校 地域連携が鍵
 児童生徒が自然学習などを行う高知県内小中学校の学校林(校有林)の多くが、遊休資産となっている。高知新聞の調査=表参照=によると現在、私立を含め19市町村の70校が保有しているが、木材の伐採・販売などを含めて活用しているのは9市町村の17校と4分の1。背景には間伐などを行う地域の人材不足がある。
 
 国土緑化推進機構によると、学校林は明治時代から続く制度。木材を校舎建設に利用したり、売却益を備品購入や行事の費用に充てたりする目的で、市町村や住民から森林の貸与、提供を受けて設けられた。今では主に動植物の観察や林業体験などの場になった。
 
 各市町村の教育委員会へのアンケートなどによると、利活用が進まない最大の理由は人材難だ。教職員は必ずしも森林の知識があるわけではなく、異動も避けられない。森林整備や児童生徒の指導は地域の住民頼みだが、過疎や林業衰退に伴って確保が難しくなったという。
 
 香美市は小中学校3校が保有しているが、「(間伐などの)整備が知識、資金面で困難になった」として2011年を最後に学習活動を停止。土佐市も小中学校9校の学校林が活用されておらず、「協力できる地域の方がいない」ことを理由に挙げる。
 
 ここ数年の間に活動を休止した学校からは、「山道が大雨で寸断され行けなくなった」「道が狭いためバス会社に断られた」との声も。森林が学校から遠く、移動のため現地で十分な学習時間が取れないといった事情も影響している。
 
 学校の統廃合が進む過程で、学校林がうまく引き継がれないケースは考えられる。長岡郡大豊町は旧大豊村が発足した1955年にあった24校が、現在は小中1校ずつ。大豊町教育委員会の担当者は「学校林はほぼ全てにあったはず。今の2校が引き継いだが、林業体験などは学校に近い別の山でしている」という。
 
 機構の現況調査で、林業演習を行う農業高校などを含めると、高知県の学校林は107校の計1245・3ヘクタール。鹿児島県に次ぐ全国2位の面積を誇るが、内実は森林県として寂しい状況だ。
 
 一方、県内には地域の協力で、児童生徒の森林への関心を高める活動を続けている学校もある。
 
 
校舎のすぐ裏の山に学校林があり活動が盛んな東又小学校(四万十町黒石)
東又小(四万十町)木材売り本購入
 多くの県内小中学校で放置されている学校林だが、少数派ながら活発な自然学習や木材利用を続ける学校もある。各校の事例を追うと、地域との連携はやはり大きな鍵となっている。
 
年十数万円還元
 高岡郡四万十町の東又小学校は、学校から徒歩5分ほどの場所に約9・6ヘクタールのヒノキ林を持つ。児童は10月から3月までほぼ週1回山に入り、除間伐作業のほか、木登りなどの野遊びも体験する。
 
 支えるのは四万十町のNPO「朝霧森林倶楽部(くらぶ)」だ。児童の指導だけでなく、学校林で伐採した木はチップ工場などに販売。年十数万円を東又小学校に還元しており、東又小学校はその金で図書室の本を購入している。十川中学校も昨年、同様の連携活動を始めた。
 
 朝霧森林倶楽部の活動は基本、ボランティア。学校林に限らず各地で間伐や植栽を実施しており、年間約600万円の活動費は国、県の補助金や企業からの寄付でまかなう。島岡幹夫会長(81)は学校林での取り組みについて、「正直言って大変だが、子どもたちが学べることは多いはず」と胸を張る。
 
 学校にとって心強いのは林業団体ばかりではない。米奥小学校の元校長、門田雅人さん(71)は「学校林への小道に架かる丸太橋が大雨で流された時は、地域の人がすぐ直してくれた」と振り返る。米奥小学校は学校林に巣箱を設置するなどして動植物を観察するほか、四万十川沿いにツリーハウスも作った。
 
鳶ケ池中は宿泊体験 三里小は津波避難場所、シイタケ栽培
 南国市の鳶ケ池中学校の活動は歴史が長い。香美市土佐山田町の根曳峠近くに戦前から約24ヘクタールの学校林を保有。敷地内には風呂を備えた宿泊棟があり、毎年春に3年生が1泊2日で伐採や木工などを体験する。
 
 鳶ケ池中学校の教員は「生徒の親もみんな経験しているからでしょう。『危険ではないか』といった反対の声は出ない」。今年は新型コロナウイルスの影響で中止となったが、「何としても続ける」と話す。
 
 高知市の三里小学校の児童は、校舎裏の学校林でタケノコ掘りなどを体験する。珍しいのは、学校林が津波の避難場所に指定されていることで、防災訓練でも学校林に親しむ。高須小は近くに大きな山がないものの、敷地内に小規模な雑木林があり、シイタケを栽培して給食で使っている。
 
30年ぶり“復活”
 過疎高齢化と学校統廃合などを背景に、人々の記憶から消えた学校林は多いとみられるが、“復活”したケースもある。
 
 四万十市の中筋中学校は2019年、地域からの寄付が記された石碑に、学校林の記述があるのを教員が発見。「せっかくなので活用しよう」と、秋に生徒が住民の協力を得て草刈りなどの整備を行った。それまで少なくとも30年以上は使われていなかったという。
 
 中筋中学校は2022年度に中村西中学校に統合される予定で、学校林の木を使った記念品作りも検討している。
 
 本格的な森林管理には林業に明るい人材が不可欠。とはいえ、各校の事例は学校林が林業に限らずさまざまな体験や交流に活用できることを示す。教職員が前向きに活用を考え、住民や保護者と協力態勢をつくることが、“宝の持ち腐れ”を改善する一歩といえそうだ。(窪川支局・井上太郎)

カテゴリー: 環境・科学高幡

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