2020.06.01 08:00

【県内移住千組超】地域の活力へ「好循環」を

 人口減少に悩む高知県にとって、意味のある「千組突破」であろう。
 高知県内に移住した人の数が2019年度、1030組(1475人)になり、初めて年間千組を超えた。
 県や市町村、民間の支援団体など、官民挙げて移住者を呼び込んできた成果と言える。県が産業振興計画で掲げていた「2019年度に千組」の目標が達成された。
 県は2013年ごろから移住促進策を強化し、国の地方創生の流れと、移住ブームの波に乗った。「高知家」プロモーションを展開し、東京などで相談会を開催。県移住促進・人材確保センターを設立し、情報提供や就職相談の窓口を一本化するなどして取り組みを進めてきた。
 高知県内への移住者は2012年度の121組(225人)から右肩上がりに伸びていき、2018年度は934組(1325人)に達していた。
 ただ、移住促進策は「数」だけで成果を計れない部分が大きい。
 移住とは人生の決断であり、理由や目的は人それぞれ。決めるまで数年かかる場合もある。
 そうした人々に寄り添い、課題の解決に当たっている市町村の担当者や民間の支援団体は、いわば人生相談に乗っている。この「数」だけで割り切れない「心」の部分が、移住促進策の根幹と言えよう。
 先月の高知新聞に、県の移住体験ツアーをきっかけにして、高知市に移住した夫婦の記事が載っていた。
 夫は40代の銀行員で、移住した理由を「高知で出会った人たちがすごく楽しそうで、一緒に地方創生に取り組みたくなった」と話す。
 30代の妻は、移住後も菓子メーカーに「遠隔勤務」している。新型コロナウイルスの医療従事者支援として、高知医療センターにメーカーから菓子を大量に差し入れた。
 心を動かされて移住した高知県で、今度は県民の心を動かすような行動をする。県民と移住者が刺激を与え合う「好循環」と言えよう。それらがさまざまに生まれれば、地域の活力は高まっていくだろう。
 全国調査では、都会から地方に移住した人のうち6組に1組は移住地を離れてしまうとの報告がある。
 移住を「定住」にするために、アフターケアにも力を入れねばならない。満足度はどうか。移住地を離れた場合の理由なども幅広く調査し、検証することが必要だろう。
 県は新たな目標として、「2023年度に年間1300組」の移住者数を掲げた。達成には相当な努力が要る数字だ。
 新型コロナが状況を変えるかもしれない。感染拡大は東京に一極集中する怖さ、人口が密集しすぎるリスクをあらわにした。そしてテレワークなど、場所を選ばない新しい働き方を浸透させつつある。
 かつて東日本大震災がそうだったように、人々が生き方を見つめ直す契機にもなろう。地方への移住熱が再び高まるかもしれない。
 先手を打つような県などの移住促進策を期待したい。

カテゴリー: 社説

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