2020.05.30 08:00

【コロナ議事録】不作成は将来に禍根残す

 新型コロナウイルスの感染拡大は国民の生活や経済に大きな影響を与えている「災害」である。政府の対策や意思決定過程を検証させないかのような安倍政権の姿勢は、国民の将来に禍根を残す。
 医学的な観点から新型コロナ対策を検討、助言してきた政府専門家会議の議事録を、政府が作成していないことが分かった。
 会議は非公開で、首相官邸のウェブサイトには3月までの議事の概要と資料は公開されている。しかし、どのメンバーがどんな発言をしたのか詳細は分からないという。
 政府は東日本大震災に関する会議の議事録が未整備だった反省から、2012年に行政文書管理ガイドラインを改正。今年3月、新型コロナ対応を将来の教訓として公文書の管理を徹底する「歴史的緊急事態」に初めて指定している。
 会議の発言内容や出席者に関する記録作成が義務付けられたが、具体的な対象は政府側が判断するため、公文書が適切に保存されるかどうかが当初から懸念されていた。
 政府専門家会議は感染症や公衆衛生の専門家らをメンバーに2月に設置。国内の感染状況の分析結果や求められる予防策を提言してきた。
 コロナ対策に関する重大な政治判断にも影響を与えている。
 安倍晋三首相が2月末、側近の異論を押し切って決めた全国一斉の休校要請は、「これから1~2週間が瀬戸際」という専門家会議の警告が下地になったとされる。
 むろん、緊急事態宣言を解除する目安なども専門家会議の提言に基づいている。議事録を残さなくていい会議だとは思えない。
 会議や議事録の公開について、国や自治体はしばしば「自由で率直な議論を妨げる」と主張する。しかし、議論が公開される程度で意見が言えなくなるようなメンバーが政策に関わる会議に必要なのか。
 実際、今回の専門家会議のメンバーからは政府の消極的な開示姿勢に疑問の声が出ているという。
 コロナ対応では、03年ごろの重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行を経験した台湾、韓国などが評価されている。日本は対策を決める過程の記録を残さないのならば、別の感染症が将来流行した場合に今回の教訓を生かせない恐れも出てくる。
 安倍政権下では、陸上自衛隊による国連平和維持活動の日報隠蔽(いんぺい)、森友学園を巡る財務省の決裁文書改ざん、「桜を見る会」の招待者名簿の廃棄など、ずさんな公文書管理のあり方が問われてきた。
 日本では記録が残っていると、問題をつつかれ、蒸し返されるという意識がある。これに対し英国では、行われた政策が当時正しい選択だったことを堂々と主張するために記録を公開する―。専門家にはそんな見方がある。
 ことに感染症対策の記録は現在の政権だけのものではない。将来の国民に対する責任である。安倍政権は肝に銘ずる必要がある。  

カテゴリー: 社説

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