2020.05.28 08:36

ただ今修業中 精神保健福祉士 谷脇英恵さん(22) 四万十市

「支援に必要な知識をもっと身に付けたい」と話す谷脇英恵さん。撮影時だけマスクを外してもらった(四万十市具同の渡川病院)
「支援に必要な知識をもっと身に付けたい」と話す谷脇英恵さん。撮影時だけマスクを外してもらった(四万十市具同の渡川病院)
頼られる相談相手に
 体を寄せ、目線の高さを合わせる。「○○さん、谷脇です」。相手の名前を呼び、自分の名前を言う。今日の気分はどうかな? 昨日までのやりとりを覚えてくれてるかな? 患者と接するたび、表情の奥にある感情を見逃さないよう心掛ける。

 この春から、四万十市具同の渡川病院で勤務する谷脇英恵さん(22)。精神保健福祉士として、認知症や統合失調症など精神疾患を抱える人々の相談支援にあたっている。

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 高岡郡津野町出身。実家は食料品などを扱う商店を営んでいる。幼い頃、店に通うおじいちゃん、おばあちゃんが「友達」だった。他愛(たあい)もない話をしたり、お菓子を買ってもらったり。

 物心が付き、地元の小学、中学と進むうち、買い物袋を抱えて「重いねえ」とつぶやいていた「友達」は一人、また一人と亡くなっていった。「自分たちの地域がなくなっていく」。漠とした不安を胸に感じた。

 地域で暮らす人たちの生活を守り、支えたい―。「地域福祉」に関心を抱き、高知県立大社会福祉学部に進学した。

 防災サークル「いけアイ」に所属し、3年生で部長に就任。高知市内で地域住民と鍋を囲み、防災などの課題を話し合う場を企画した。「地域福祉も防災も地域のネットワークづくりが大切。メンバーが思いを同じくし、行動に移していく大変さを学べました」と振り返る。

 精神保健福祉士の仕事に興味を深めたのは、大学4年の夏に行われた実習で渡川病院のスタッフらと交流したのがきっかけ。「相談員同士のつながりも深く、心の底から仕事に誇りを持っているのを感じた」

 頭をよぎったのは、幼い頃の「友達」たちの姿。県内各地で高齢化が進む中、精神疾患の一つである認知症を抱える人や、その家族へのサポートに携わりたいと考えるようになった。

 担当教員からも「疾患と向き合い、患者を地域に送り出す病院の仕事は大切」と背中を押され、医療現場から「地域福祉」を支える道を選んだ。

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 渡川病院に勤めて1カ月半。現在は10人ほどの入院患者を担当し、退院に向けて本人や家族と話し合いを重ねる。痛感したのは、患者と家族双方の思いを尊重し、融合させ、よりよい支援を導き出すことの難しさだ。

 「家に帰りたい」と言う患者がいる。症状によっては病院にいることを理解しきれていない人もいる。「面倒を見切れない」と悩む家族もいる。

 「疾病を理解し、患者がなぜ帰りたいか、しっかり洞察する力がいります」。受け入れ可能な施設はあるか、週末だけは家族と過ごすことは可能か、調整を重ねる。ただ、「支援の制度やサービスの知識面がまだまだ足りなくて…」。ケアマネジャーや先輩スタッフらに助けられながらの毎日だという。

好きな言葉
好きな言葉
 好きな言葉は「縁」。津野町の「友達」、実習で出会った今の先輩たち、そして患者やその家族…。そのすべてのつながりの先に、今の自分がいる。

 「いつか、患者さんたちから頼られ、『あなたに出会って良かった』と言ってもらえる相談相手になりたいですね」。「縁」を深める日々が続く。

  写真・反田浩昭
   文・海路佳孝

カテゴリー: 社会幡多

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