2020.05.27 08:37

まんが甲子園中止 覚悟はしていたけど…ペン児・教員がため息

代替ウェブ企画に期待も
 覚悟はしてたけど--。今年8月、29回目を迎えるはずだった全国高等学校漫画選手権大会「まんが甲子園」。新型コロナウイルスの影響で、1992年にスタートして以来、初の中止が決まった。知らせを受けた高校ペン児と、顧問のペン教員たちの間に、落胆のため息が広がった。
 
 高知県がまんが甲子園中止を発表したのは5月12日。
 
中止にショックを受ける那覇工業高校の顧問、田力さん(那覇工業高校3年の宮城志門さん作)
中止にショックを受ける那覇工業高校の顧問、田力さん(那覇工業高校3年の宮城志門さん作)
 その日の夕方、沖縄県の那覇工業高校の教員でマルチアート部顧問、田力(でんつとむ)さん(58)は、高知新聞の電話取材で中止を知った。
 
高知市の「かるぽーと」そばの桜並木の間に、第28回大会までの歴代最優秀作品のモニュメントが並ぶ。今年の分はお預けとなった。「初めて見た」と、たたずむ青年たち(同市菜園場町)
高知市の「かるぽーと」そばの桜並木の間に、第28回大会までの歴代最優秀作品のモニュメントが並ぶ。今年の分はお預けとなった。「初めて見た」と、たたずむ青年たち(同市菜園場町)
 「えー!! ショックー。あ~」と言ったきり、しばし絶句。「(高知で本選を開くのは無理でも)ネットでやらないかなぁーと思っていたので…」
 
仲間とブースにこもって作品を仕上げ、一緒に喜び、悔しがる。3密あってこその、まんが甲子園=コラージュ・松本康裕
仲間とブースにこもって作品を仕上げ、一緒に喜び、悔しがる。3密あってこその、まんが甲子園=コラージュ・松本康裕
 受話器越しにがっくりしている様子がひしひしと伝わってくる。
 
■リベンジを
 那覇工業高校はこれまで、まんが甲子園の予選に22回作品を応募。5回本選出場を果たし、審査委員長賞や優勝旗を手にしてきた。
 
 田さんは、2002年からずっと、生徒たちと本選出場を目標にやってきた人。
 
 「子どもたちは予選に取り組む時から、憎たらしいほどいい顔になっていくんですよ。本選に出た時はもちろん、落選した時の顔もいいんです。子どもたちが成長するんですよねえ」と情熱たっぷり。昨年、10年ぶりに本選に進んだが、思うような結果を残せず、「今年はリベンジを―と、3年の男子生徒たちが張り切って、張り切って…」。何ともやりきれなさそうに語った。
 
 その一人、那覇工業高校3年の宮城志門(しもん)さんは「まんが甲子園は、自分にとって野球部の甲子園であり、運動部のインターハイのような大会。3年間頑張ってきた結果が出せなくなった」と悔しがる。
 
■空っぽな感じ
 「ガッカリというより空っぽな感じ。何も頑張れない状態で終わるなんて」とメールを高知新聞に寄せたのは、母国ベトナムに帰国中の明徳義塾高校3年、チャン・ゴック・アン・ニエンさん。昨年は、1学年上のタイからの留学生と2人で本選に出場。1次競技の敗者復活戦から決勝進出を果たし、今年はさらに上を目指そうと、テーマを想定し、漫画にするアイデアを考える練習をしていたという。
 
 近年入賞の快進撃を続けていた高知商業高校3年でコミックアート部部長、武石希(のぞみ)さんは「スポーツや部活の大会がいろいろなくなって、厳しいかなと思っていた」と沈んだ口調に無念さをにじませた。
 
■楽しみな出会い
 まんが甲子園は高知県内約20校、250人前後の高校生ボランティアスタッフが運営をサポートしており、彼らにとっても楽しみな大会。その中には予選で敗退したペン児もいる。
 
 過去2回スタッフを務めた、春野高校3年で漫画研究部部長の小林水桜(みお)さんは「本選に出場できなくても、県内外や外国の高校生といろんな話ができる。今年も新しい友達ができるのが楽しみだったので残念」。清和女子高校2年の松尾さやかさんは「学校はバラバラだけど、仲良くなれていい思い出。今年もスタッフがしたかった」。
 
 特に大会終了後に行う、選手、高校生スタッフに大人も加えた交流会は生徒たちが企画し、最高に盛り上がるそうだ。
 
■見てもらってこそ
 主催者の高知県と、官民でつくるまんが王国・土佐推進協議会は、まんが甲子園の代わりに今夏に行う、漫画投稿などウェブ上での交流企画を練っており、6月に具体的な内容を発表する。
 
 高校ペン児たちは「漫画は見てもらってこそ、達成感を感じられると思う」「これまで通りとはいかなくても、絵について誰かと話せたら」と期待を寄せる。また、「まんが甲子園の運営も生徒同士で議論してきた。ツイッターなどSNSでウェブ企画のアイデアを出し合えればいいかも」といった提案も。
 
 取材の中では中止にがっかりしながらも、来年の大会に向けた意欲的な声も聞かれ、岡豊高校2年で漫画・アニメ部の竹村夏葉さんは「まんが甲子園はまんが部の見せ場。来年の本選目指して画力を上げ、アイデア出しを頑張る」。
 
 栃木県立高校を3回優勝に導いた元美術教諭で、今も生徒や教員に教えを請われる名物指導者であり、造形作家の青木世一(せいいち)さん(66)=栃木県=は愛情たっぷりにハッパを掛ける。
 
 「今から能動的に頭を働かせて描いてないと、来年夏に戦えるほど甘くないよって言いたい」
 
 青春の一ページを描く、まんが甲子園。来年こそ、高知で--。(徳澄裕子、竹村朋子、楠瀬慶太)
 
《ズーム》まんが甲子園
 球児ならぬ、高校ペン児たちの青春の祭典。各校3~5人のチームで対戦。出題されたテーマに沿って1枚の紙に漫画作品を描く。郵送またはメールによる予選には例年、国内外の300校前後が作品を寄せる。激戦の予選審査を通過した約30校が、高知市の「かるぽーと」を主会場に集結。2日間の本選で1次競技と決勝を行い、ともに制限時間(5時間半)内に作品を仕上げる。1次競技で敗退しても、敗者復活戦を勝ち抜けば決勝の舞台に立てる。

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