2020.05.24 08:00

【中国全人代】軍拡より経済立て直しを

 新型コロナウイルスの感染拡大で延期されていた中国の全国人民代表大会(全人代=国会)が開幕した。
 李克強首相は政府活動報告で、2020年の国内総生産(GDP)の成長率目標を示さなかった。1988年に目標の公表を始めて以来初めてのことだ。
 新型コロナで中国経済がいかに大きな打撃を受けているかを物語る。20年予算案に計上された一般公共サービス費や外交支出は前年に比べて1割以上減った。
 ところが国防費は別格扱いだ。
 前年比6・6%増の約1兆2680億元(約19兆1700億円)を計上した。19年予算案に比べて伸び率は落ちたものの、軍拡路線の継続を内外に印象づけた。
 李首相は、今世紀半ばまでに世界一流の軍隊を目指す「習近平強軍思想」の実現を活動報告で強調した。装備の最新鋭化や技術革新をさらに進める考えだ。
 中国の国防費は既に米国に次ぐ規模で、日本の防衛費の4倍近くに達している。経済や貿易面で対立しているトランプ米政権とは、南シナ海や台湾問題を巡っても激しいやりとりが続いている。
 そうした状況で、さらに「強軍思想」を推し進めれば米中の対立は深まり、軍拡競争に拍車が掛かるのは明らかだ。
 日本を含めた東アジア全体の安全保障環境も脅かされるだろう。コロナ禍で世界経済が疲弊している中、軍拡競争からは明るい展望は見えてこない。
 世界経済をけん引してきた大国の一つ、中国が成長率目標も示せないということは「非常事態」だ。習近平国家主席は、20年のGDPを10年と比べて倍増させるという目標を掲げてきた。達成はほぼ不可能とみられている。
 特別国債の発行などで地方経済を支え、雇用安定と国民生活の保障に取り組むようだが、まずは経済立て直しに全力を注ぐべきだ。
 コロナ対策について習指導部は「大きな戦略的成果を収めた」と全人代で力を込めた。
 一方で、昨年12月に武漢市で初めての発症者が確認された後、当局が情報を隠したり報告を遅らせたりしたことも分かっている。
 初動対応や感染封じ込めの過程は本当に適切だったのか。成果だけを強調するのではなく、大国の責任として詳しい経緯を世界に説明する必要がある。
 香港に関する新たな法律制定の動きが非常に気掛かりだ。法律の決定草案が全人代に示された。
 国の安全を維持するためとして新たな治安機関を香港に設置するなどの内容という。中国本土と同様に、政府を批判した言論が罪に問われる可能性がある。それでは、高度な自治が保障された香港の「一国二制度」が損なわれる。
 全人代最終日の28日にも草案が採択される予定だ。日本を含めた国際社会が動向を注目したい。

カテゴリー: 社説

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