2020.05.23 08:00

【コロナと医療】「次の波」前提に準備を

 新型コロナウイルスの感染拡大は鈍化傾向になっているとはいえ、再拡大への懸念は強い。「次の波」に備え、医療崩壊を防ぐ手だてを尽くしておく必要がある。
 共同通信の調査で、最先端のがん治療や指定難病の診療などを行える全国86の特定機能病院のうち全体の3割を超える病院が、本来の役割である高度医療に支障が出ていると回答した。
 新型コロナに感染した患者は、退院するまでには2~3週間かかることが多い。重症化すれば、人工心肺などの管理に多くの医師や看護師らが必要になる。
 こうした事情が病床や医療資源を逼迫(ひっぱく)させる原因になっている。
 特定機能病院でも、スタッフや病室、入院ベッド、機器が不足しているという回答が多かった。
 病院によっては、感染症担当以外の医師や看護師も駆り出されて各診療科の人手不足が深刻化。外来診療などを制限しているほか、3次救急のベッドをコロナ対応に使い、従来の重症患者の受け入れに支障が出ているケースもあるようだ。
 患者団体は、がん患者の手術や治療が延期される事例もあるという声を上げている。救える命を救えなくなるような事態は絶対に避けなければならない。
 新型コロナは感染者の約80%が軽症、酸素吸入が必要な中等症が15%程度、重症は5%程度とされる。
 厚生労働省は先月下旬、患者の症状に応じた医療機関の役割分担を強化する方針を打ち出した。都道府県に対し、軽症者は宿泊施設などで療養し、中等症患者らを集中的に受け入れる「重点医療機関」の設置を促している。
 適切な役割分担を進め、高度医療を担う病院の負荷を軽減していく態勢の整備が急務になろう。
 高知県によると、県内では高知医療センターを重症、中等症に対応する重点医療機関に指定。特定機能病院の高知大医学部付属病院は、高度医療のとりでとして機能を温存している。感染が再拡大した場合の対応の協議も続けているという。
 医療崩壊の阻止には、全国の病院で相次いできた院内感染をどう防ぐかも重要だ。中でも感染防護具の不足は当初からいわれている。
 民間企業が全国の医師に行った4月の調査では、医療用マスクは70%以上、感染防護服なども60%台が不足していると回答した。別の調査では、マスクを使い回ししている医師が3割以上に上った。
 政府もコロナに対応する医療機関への優先配布を進めてはいる。しかし、現場からは常に感染の危険性がつきまとう現状を「戦争と同じようなもの」とする声も出ている。
 院内感染への警戒を強めた結果、救急患者のたらい回しが増えているという実情もある。政府は感染拡大が落ち着いてきている今こそ、支援の強化を進めるべきだろう。
 「次の波」が必ず来るという前提に立った準備を求めたい。

カテゴリー: 社説

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