2020.05.11 08:00

【コロナと分権】地方の主体性を損なうな

 新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるには、国と地方自治体の緊密な連携が欠かせない。にもかかわらず感染防止対策の財源などを巡って、両者の間で不協和音が聞こえたり混乱が見られたりした。
 地方が実情に応じて対策を講じるためには権限と財源が要るが、国からの移譲は十分には進んでいない。コロナ禍は停滞する地方分権の現状も浮き彫りにしている。
 「社長かなと思っていたら、中間管理職になったよう」
 緊急事態宣言を受け、事業者に休業要請を行おうとした東京都の小池百合子知事の言葉は記憶に新しい。要請の対象業種や時期に関して「待った」をかけた政府との調整が長引き、時間を浪費したことへの不満が見て取れる。
 新型コロナ特別措置法は陣頭指揮を執る都道府県知事に、外出自粛や休業の要請など強い権限を与えている。その行使に当たって国の「口出し」が増えれば、地方の主体性が損なわれる恐れが出てこよう。
 今回のコロナ禍への対応は地方の方が国より一歩先んじたり、柔軟だったりする印象を受ける。
 北海道は早い段階で独自の緊急事態宣言を出し、道民に外出自粛を求めた。東京都は事業者への休業補償に応じない政府をよそに協力金制度を設け、それは多くの自治体に広がった。国が抑制的なPCR検査では新潟県が「ドライブスルー」方式をいち早く導入するなど、拡充への取り組みも自治体先行だった。
 国はそうした地方の工夫を後方支援するべきだ。しかし、神奈川県の黒岩祐治知事は「特措法は知事に権限を渡すが、軍資金をしっかり持たせてくれず丸裸で苦労した」と打ち明けている。
 実際、休業した事業者への協力金は財政が豊かな自治体ほど手厚い。財政基盤の弱い地方は支給したくてもできないのが実情だろう。物価の違いなどを考慮すれば、協力金は同じ額でなくてもよい。とはいえ、自治体によって極端に差がつくのは好ましくない。
 地方側の要望で国からの臨時交付金1兆円を、協力金の財源に充てられるようになった。しかし同交付金の使途には医療体制の整備なども含まれる。1兆円では足りないことが想定され、全国知事会は交付金の増額を求めている。国は応じるべきだろう。
 コロナ禍で疲弊する地方経済、困窮する住民に日々向き合う地方自治体も、ウイルスとの闘いの最前線と言える。現場が最大限の力を発揮できるようにするためにも、国からの権限や財源の移譲は不可欠だ。
 国と地方の関係を「対等・平等」とした地方分権一括法の施行から、ことしで20年。分権の精神の大切さをコロナ禍の中で改めて知る。
 対等である以上、地方の側も国の「言いなり」や「指示待ち」であってはならない。知事や市町村のトップにはより一層、発信力やリーダーシップが求められる。

カテゴリー: 社説

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