2020.05.09 08:00

【地上イージス】配備を急ぐ必要があるか

 政府は、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」を秋田市の陸上自衛隊新屋(あらや)演習場へ配備する現行案を断念したという。
 新屋配備を巡っては防衛省のずさんな調査ミスや住民説明会での職員の居眠りが昨年相次いで発覚した。根強い不信感を住民は持っていた。
 批判を受けて防衛省は秋田や青森、山形県の国有地計20カ所の再調査を開始。しかし、新屋は住宅地や学校との距離が近く、秋田の佐竹敬久知事らは配備断念を防衛省に求めていた。
 そうした経緯を踏まえると、新屋断念はごく当然ともいえる。
 一方で政府は、日本全域を地上イージスでカバーするには東日本は秋田県、西日本は山口県にそれぞれ1基を配備する必要があるとの考えを崩していない。
 秋田の新たな候補地は、新屋演習場を選んだ際に浮上した県内9カ所を想定しているようだ。
 ただし、防衛省の対応を見ていた住民が新たな候補地となることを簡単に受け入れるとは思えない。政府が目標とする2025年度以降に配備がずれ込むとの見方がある。
 そもそも、日本を取り巻く安全保障の状況は刻々と変化している。
 2基の地上イージス導入を政府が閣議決定したのは、北朝鮮のミサイル発射が続いた17年のことだ。イージス艦に比べて常時警戒が容易で、長期の洋上勤務も必要ないため部隊の負担が減るとされた。
 だが、その後北朝鮮は迎撃が難しい高性能ミサイルを開発したとみられている。防衛省によると、北朝鮮が昨年発射したミサイルの中には低高度で飛び、落下直前に変則軌道を描くものもあったいう。
 地上イージスに使う予定のミサイルは大気圏外での迎撃を想定している。大気圏内を変則軌道で飛ぶ弾道ミサイルの迎撃は難しいとされる。配備するころには「新たな脅威に対応できず、時代遅れになる」と警告する専門家もいる。
 安保情勢が変化している中、配備を急ぐ必要がどこにあるのだろう。
 配備にかかる費用も莫大だ。2基の取得費などに4千億円以上を防衛省は見込んでいる。これに敷地造成費や迎撃ミサイルの費用などが加わる。地上イージス導入は、トランプ政権の求めに応じた米国製兵器の「爆買い」との指摘があったことを国民は忘れていない。
 ずさんな調査ミスが発覚した当初案について、「新屋ありき」と批判する住民も少なくない。そうした不信感を住民は払拭(ふっしょく)できているだろうか。昨年の参院選・秋田選挙区での自民党候補の敗北には配備計画への反対論が影響したとみられている。
 民意に背を向けて計画を強硬に進めれば、沖縄の米軍普天間飛行場の辺野古移転計画と同じになる。
 新型コロナウイルスの影響で多くの国民が苦しい状況にある。日本に地上イージスは本当に必要なのか。計画をいったん白紙に戻し、国会で慎重に議論すべきだ。

カテゴリー: 社説

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