2020.05.06 08:25

マスク備蓄に悩む高知県内市町村 香南市最多26万枚、ゼロの自治体も

 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、不織布製使い捨てマスクの品不足が続いている。マスク確保に悩む医療機関や高齢者施設、学校などから、市町村役場に助けを求める声も上がる。各自治体のマスク備蓄状況は、どうなっていたのか。高知新聞のアンケートで、大きな差が浮かび上がった。

 県によると、自治体のマスク備蓄に関する指針はない。南海トラフ地震の避難所運営に関するマニュアルに、必要な救急用品の一例として挙げられている程度という。

 県内の市町村に、今年1月1日現在での備蓄状況を聞いたところ、0枚の芸西村や三原村から、26万枚の香南市までさまざまだった。

 マスクを備蓄していた理由は「2009年の新型インフル対策で購入」「避難所での感染予防用」が多数を占めた。備蓄に余裕のあった自治体は今回のコロナ騒動を受け、学校や福祉施設などに配布。高齢者に接する職員や窓口業務職員用などに活用している。

 一方、備蓄していない、もしくは少ない自治体は「新型インフルの時は備蓄していたが、その後全て消費した」(三原村)などと回答。今後も「(備蓄が)少量なので配布予定はない」(奈半利町)などとしている。

 複数自治体がすでにマスクを発注済みか、今後の備蓄増を検討中。しかし現在、購入できるのは割高なものが多いだけに、新たに購入した自治体担当者は「できるだけ多く欲しいけど、高すぎる…」と口をそろえる。

 2003年からの重症急性呼吸器症候群(SARS)、2015年からの中東呼吸器症候群(MERS)…。感染症はたびたび人類を脅かしてきた。新型コロナが終息しても、再び同様の状況が起きる可能性がある。南海トラフ地震への備えも必要だ。

 どれだけの量のマスクを確保しておけばよいのか。各自治体が頭を悩ませている。


高齢者と接する機会が多い安芸市の地域包括支援センター。職員にはマスクの着用を義務付けている(同市矢ノ丸1丁目)
マスク備蓄の重要性痛感 高価格がネック
 多くの県内市町村が不織布製マスクの確保を進めているが、高騰した価格が重くのしかかる。終わりの見えない状況下で、「どれぐらい枚数があれば万全と言えるのか。雲をつかむような話」との声も漏れる。

 保有数ゼロだった芸西村と三原村。担当者は「食品や水のように、どうしても必要なものとも考えておらず、盲点だった」(芸西村)。「(2009年からの)新型インフルの時は500枚備蓄があったが、その後消費した。備蓄の必要性に気付かされた」(三原村)と悔やむ。

■寄贈が残る
 一方、多くのマスクを備蓄していた自治体も、先見の明や深謀遠慮のたまもの…というわけではなさそうだ。

 1月1日時点で、県内最多の26万枚を備蓄していた香南市は「約5年前に企業から寄贈されたものがそのまま残っていた」。今回、窓口職員や小中学校に配布し、県にも14万4千枚を提供したが、4月15日時点で、まだ5万枚以上あるという。

 5万枚近くを保管していた安芸市には、新型インフル後に「在庫がだぶついた」としてドラッグストアから3万2千枚が寄贈されていた。「おかげで市内の福祉施設に、素早く配布することができた」という。

 備蓄が多いに越したことはないが、商品によっては使用期限が定められているものも。

 一定数の保管に向け、安芸市は「救急隊員は日常的にマスクを使用している。備蓄分を消防に回し、新たに補充していく方策ができないか。高齢者施設や医療機関とも連携してストック方法を構築したい」。南国市は「現在も(消費した分を買い足す)ローリングストック方式を採っているが、備蓄数全部が期限内に入れ替わるほどではない。どうするのかが課題」と頭を悩ませている。

■何枚なら…
 多くの自治体がマスク確保を急ぐ中、役場には毎日のように県外業者から「マスク販売」のファクスが届くという。いずれも値段は50枚で3千~4千円程度と割高だ。

 1枚60円で2万5千枚を購入した須崎市は「値段は平常時の県内業者の6倍程度。しかし今後、市内での感染も懸念される。思い切って購入した」。

 黒潮町は「『高い』とは言っていられない状況」と、1枚約40円で10万枚を購入。全住民に9枚ずつ配った。一方で「有事の際、役場の対応だけでは限界がある。日頃から各家庭や事業所にも備えをお願いしたい」と強調する。

 一方、全住民への配布は「現実的ではない」という意見も目立つ。日高村は「大量に備蓄しても住民に放出すれば、あっという間になくなる。妊婦さんら、優先度が高い人にピンポイントで配ることが大事」と話す。

 では、今後想定される南海トラフ地震も踏まえ、各自治体は備蓄をどう考えるのか。
 「1人当たり10枚を確保したい」(大月町)、「地震時の想定避難者(1万6千人)の7日分」(南国市)など、市町村によってばらばらだが、いずれにせよ、ほとんどの市町村が備蓄の重要性を痛感した様子。

 「国、県の応援を待っていては間に合わないことが分かった」「同じように入手困難の状況がいつ起こるとも限らない」と、備蓄増の必要性を強調していた。(安芸支局・森部智成)

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カテゴリー: 社会新型コロナウイルス社会

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