2020.05.05 08:00

【こどもの日】命の大切さ話し合おう

 こんなままごと遊びを見掛けた。5歳の女の子が布団に縫いぐるみを並べて寝かせていた。おもちゃの聴診器を次々に当てて一言。「みんなあ、コロナでお熱が出ちゅうが」
 今、幼い子であっても、新型コロナウイルスによる危機を感じ取っている。私たちの日常は様変わりした。かつて経験したことのない状況で迎える「こどもの日」である。
 子どもたちは「ないない尽くし」の毎日を強いられている。保育所や幼稚園、学校に行けない。先生や友だちに会えない。部活動や習い事もできない…。
 子どもらしい活動を封じられ、ストレスや不安は大きい。それでも今は、家にいなければならない。全てはウイルスから命を守るためだ。
 こうしたタイミングの「こどもの日」である。子どもと一緒に命の大切さについて話し合う、またとない機会にできないだろうか。
 小さな子どもであれば、その子が誕生した時の思い出や喜びを聞かせることから。手を握ったり抱きしめたりすれば、言葉にできない不安を和らげることにもなるだろう。
 一定成長した子どもであれば、世界の実情も伝えたい。コロナ出現以前から感染症によって、多くの子どもが命の危険にさらされている。
 医療体制が整わず、そもそも清潔な水やトイレがない国がある。政情不安のコンゴ(旧ザイール)では、はしかの流行で5千人以上が亡くなった。9割以上が5歳未満だった。
 シリア内戦の国内避難民はコロナ出現によって、「究極の選択」をしている。不衛生で密集度の高い避難民キャンプにとどまるか、戦闘再燃の恐れがある自宅に戻るか。悩んだ揚げ句、子どもを多く含む12万人以上が帰っている。そうした苦難についても教えたい。
 日本国内ではコロナ患者の命を守るため、医療従事者が感染リスクを負いながら治療に当たっている。
 自己犠牲の精神は、幼い子どもたちが大好きな「アンパンマン」に重ね合わせることができる。おなかをすかせて困っている人に、自らの顔を食べさせるヒーローだ。
 しかし、その心を折るような、医療従事者や家族に対しての風評被害や心ない言動が問題化している。そうした偏見や差別はいけないと、子どもたちに伝えなければならない。
 アニメ主題歌「アンパンマンのマーチ」は、作者である高知県出身の故・やなせたかしさんが作詞している。その一節は歌う。〈そうだ うれしいんだ 生きるよろこび たとえどんな敵があいてでも〉
 コロナという敵は手ごわい。長期戦が予想される。以前の日常は変わってしまったが、私たちから生きる喜びを奪い去ることはできない。
 誰かを救うときは強く、ほほ笑みを絶やさないアンパンマンを見習いたい。ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)を保っていても、相手に笑顔を贈ることはできる。
 危機の時こそ、ほほ笑みを。子どもたちに安心感を与えよう。

カテゴリー: 社説

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