2020.05.04 08:00

【緊急事態延長】出口見据えた戦略も示せ

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い全都道府県に発令されている緊急事態宣言について、安倍晋三首相はきょう、1カ月程度延長することを決定する。
 「感染減少のスピードが期待ほどではない」とした、政府の専門家会議の提言に基づく判断である。感染を抑え込めていない現状ではやむを得ない。一人一人が密閉空間を避けるといった行動を、いま一度徹底したい。
 どのような状況になれば宣言は解除されるのか。政府には具体的な「出口戦略」も求められる。
 全国の1日当たりの新規感染者数は4月上旬に700人近くだったのが、最近は200~300人ほど。1人の感染者が平均何人にうつすかを示す「実効再生産数」も改善している。
 数値が1を上回ると感染拡大に、下回ると終息に向かう。全国では3月下旬の2・0から4月上旬には0・7に低下した。国民が取り組んでいる外出自粛などの効果が表れているのは明らかだろう。
 それでも延長するのは減少速度が遅いことのほか、人工呼吸器などを使う重症患者の数が高い水準を保っているためだ。対策を緩めた場合、感染が再燃し医療機関の負担がさらに増すことが想定される。
 一方で外出自粛などが延びると、先が見えないことへの国民の不安や「自粛疲れ」が一層強まる。どうなれば自粛は緩和されるのか。具体的な基準が分かれば、希望にも励みにもなろう。
 専門家会議は緊急事態宣言を解除するに当たっては、感染者数の減少やPCR検査と医療提供体制の拡充などを条件に挙げている。さらに踏み込んで、感染者数がどこまで減ればいいのかや必要な病床数など、目安となる数値目標も提示してもらいたい。
 「感染状況が厳しい地域」では引き続き外出自粛などを徹底する半面、「新たな感染者数が限定的となった地域」は対策を緩和できる方針も示した。
 地域別に緩和する際にも、医療体制や検査の拡充が条件となる。重症者と軽症者の治療を仕分ける病院間の役割分担はできているか。軽症・無症状者を受け入れる施設は確保できているか。できていなければ、たとえ感染者数が減っても緩和できないことになる。自治体ごとの備えや対応力が問われよう。
 経済への影響も懸念される。
 接客を伴う飲食店やホテル、デパート、娯楽施設などの休業が長丁場になると、経営に行き詰まる事業者が増える可能性が高まる。国は資金繰り支援などを行っているものの、手厚さにもスピード感にも欠けるとの不満が強まっている。
 アルバイトがなくなったり親の収入が減ったりした学生の生活費や学費、賃貸物件に入居する飲食店の家賃…。支援が必要なケースはこれからも時々刻々増えていこう。
 緊急事態宣言の延長に伴い、政治の責任はますます重くなる。

カテゴリー: 社説

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