2020.05.02 08:00

【学生の困窮】「コロナ退学」避けたい

 新型コロナウイルスの感染拡大が大学生らの生活に大きな影響を及ぼし始めている。
 学生団体がインターネットで学生アンケートを実施したところ、回答者の7割近くがアルバイト先の休業などによって収入が減ったり、ゼロになったりしていた。親の収入が減ったり、なくなったりした学生も半数を超えた。
 このままでは学生は生活費や学費が工面できなくなる。実際、アンケートでは2割が退学を検討していることも判明した。
 コロナ禍によって苦境に陥っている国民は多いが、学生は将来の日本の社会を支える人材だ。一時期の感染症流行によって、学業を断念する事態に追い込まれるのは何としても避けたい。
 在学中の学生の問題にとどまらないだろう。終息が見通せない中では進学を目指している高校生らにも影響しかねない。政府や自治体、大学などは強力な支援策を打ち出し、学生を守る必要がある。
 文部科学省も手をこまねいているわけではない。
 低所得世帯の学生を対象に新年度から始まった、いわゆる大学無償化制度に、コロナ禍で家計が急変した世帯の学生も加えることを決めた。学費の減免や給付型奨学金の支給を随時申請できるようにした。従来の貸与型の奨学金制度も同様の扱いとした。
 随時申し込める点は評価できるが、審査が迅速に進まなければ意味がない。一刻も早く支援の手を差し伸べるため、学生への制度の周知と申請手続きや審査の簡素化も必要だろう。
 そもそも日本は、先進国の中でも奨学金など学生への支援制度が不十分な国だと指摘されてきた。有利子の貸与型奨学金の割合が高く、卒業と同時に多額の返済に追われる利用者が多いのも現実だ。
 授業料は国立大でも標準額で年53万円余り。私立大ともなると負担は相当重く、コロナ禍でなくともぎりぎりの家計で勉学を続けている学生が多い。コロナ禍で退学を検討する学生が多いことと無関係とは言えないだろう。
 困窮する学生による学費減額運動が全国に拡大している。支援金給付などを決めた大学もあるが、政府や自治体に加え、大学側も思い切った学費の減免や納付期限延期などを講じるべきだ。学生の相談窓口の充実も欠かせない。
 私立大の中には学生支援に力を入れたくても経営的に余力のない大学もあるだろう。政府には学生支援に大学間格差が広がらないよう目配りと後方支援も求められる。  
 緊急事態宣言が延長されれば、学生やその保護者の苦境がさらに悪化する恐れがある。本当に退学者が相次ぐ事態になりかねない。
 緊張感を持って迅速に対応し、若者が未来への希望を失わないようにしたい。高等教育に対する日本社会の姿勢が問われている。

カテゴリー: 社説

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