2020.05.01 11:30

「外には一切出ない、籠城生活を続けています」コロナで暮らし、どうしゆう?(2)イギリス編

世界中に感染の渦が広がっている新型コロナウイルス。海外で暮らす県関係者らにオンライン取材を行い、いまの暮らしをたずねました。
第2回は、高知市出身で25年前からイギリス中部・ヨークシャーに住む久家富紀さんの話です。

▶「いつ日本に帰れるか…」コロナで暮らし、どうしゆう?(1)イスラエル編


イギリスでは3月23日に外出禁止令が発令され、今もロックダウン状態となっています。必要最低限の食料の買い出しや犬の散歩などは許可されていますが、私たち一家は3月18日から一切外出しない生活を続けています。完全な「籠城生活」を選んだのは、同居する英国人の夫と7歳の息子、そして93歳の夫の母の命を守るためです。

私は高齢者/重複障害者のデイケアセンター、夫は中高一貫公立校で働いています。職場での感染リスクが高いと判断し、夫婦ともに休暇許可を得ました。2人とも給与は当面、全額支給される予定です。お互い日本で言う公務員なので、上司や同僚の理解があり、労働条件なども恵まれていると思います。

教育機関は休校となっていますが、警察や医療関係、スーパーの店員など政府指定の重要職「キーワーカー」の子どもは通学が認められています。私たち夫婦の仕事も該当しますが、息子は自宅学習を続けています。学校からは専用のアプリを通じて、課題や連絡事項が送られてきます。担任からは毎日心温まるメッセージが届き、写真や動画を送り合っています。

オンラインの体操教室に毎朝親子で参加している。金曜日は「ファンシードレス」の日。
オンラインの体操教室に毎朝親子で参加している。金曜日は「ファンシードレス」の日。

「キーワーカー」の指定外でも、人手不足や生活のために働きに出なくてはいけない親もいます。この場合子どもは学校に預けられません。イギリスでは法律で11歳以下の子どもは1人で留守番できないので、親にとっては悩ましい状況になります。欠勤すると収入が減る場合もあるし… 私の知り合いにも、苦しい思いをしているシングルマザーがいます。

ロックダウン発令の前後は、量販店はどこも大混雑でした。トイレットペーパーや小麦粉、パスタなどが品切れに。夫が棚にたったひとつ残っていたというひしゃげたパンを買って帰ってきた時は動揺しました。

ロックダウン前のスーパー。棚にはほとんど商品がない。
ロックダウン前のスーパー。棚にはほとんど商品がない。

籠城生活最初の1週間はまともに買い物ができず、家にあるものでしのぎました。オンラインスーパーのサイトは接続するのに2~3時間かかるし、宅配サービスは1カ月以上先の予約になるような状態。

買い物に行った親戚が、スーパーで入場制限のために順番を待つ長い列の写真を送ってくれました。今は少し落ち着いたらしく、店にはほぼ通常通り商品が並んでいると聞きます。オンラインスーパーの接続時間も随分短くなりました。

距離を空けて入店を待つ人々。
距離を空けて入店を待つ人々。

オンラインスーパーが機能しない中、卸専門の業者や、地域の小さな商店がウェブサイトを立ち上げ、宅配サービスを始めました。私も業務用のコーンフレーク(7kg)やパスタ(9kg)、バケツサイズのマヨネーズなどを爆買いしました。食品も日用品も、全体的に値上がりした感じがします。「ヌテラ」(チョコペースト)の大容量サイズも買ったけど、息子には内緒。バレると際限なく欲しがるので…。

宅配で届いた業務用サイズの食品。中央が「ヌテラ」。
宅配で届いた業務用サイズの食品。中央が「ヌテラ」。

家に届けてもらう時は扉の外に置いてもらい、業者が去るのを待って中に入れます。一度、車の音に気づいて扉を開けると、配達の人が近くにいて注意されました。こちらではマスクを着けている人はほぼ見ないけど「ソーシャルディスタンシング(社会的距離)」はみんなすごく意識しています。

わが家は幸い敷地が広く、すぐそばに牧草地が広がるような場所なので、窮屈な思いをすることはありません。庭に池を作ったり、パンやハムを手作りしたり…。ゆったりと今の暮らしを楽しんでいます。息子は友人に会えず人恋しい様子もありますが、パパと一緒に遊べるのはうれしいみたい。

広々とした自宅まわり(左)庭で池作り(右)
広々とした自宅まわり(左)庭で池作り(右)

イギリスでは毎週木曜20時に「Clap For Carers(クラップ フォー ケアラーズ)」が行われ、医療者たちに感謝の気持ちを込めて拍手を送ります。わが家では、鍋などをたたいて音を鳴らします。近所からは楽器の音や声援が聞こえます。花火が上がることもありますよ。マスクも防護服もすべてが不足している最前線の現場で、感染覚悟で働く人たちには感謝の気持ちでいっぱいです。

高知で1人暮らす母のことは、本当に心配。どうか無事に過ごしてほしいと、祈るような気持ちです。5月に予定していた父の七回忌も、帰れなくなってしまいました。イギリスと日本をつなぐ便も減っています。通常の状態に戻るにはあと何年かかるのか…。

日本の状況はニュースでいつも見ています。不安感や不信感を抱えている人も多いのではないでしょうか。こんな時こそ、声を上げてほしい。ひとりひとりが声を上げれば変わることって、たくさんありますよね。

どんよりとした天気がおなじみのイギリスですが、幸運にもここ最近はずっと良い天気に恵まれています。美しい夕焼け空を見ると、高知のことを思い出します。あぁ懐かしいな、子どもの頃に見た景色だなって。遠く離れていても、私にとって高知は大切なふるさとです。(聞き手・構成 木田名奈子)

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