2020.04.29 08:00

【日銀の追加緩和】支援策の精査が必要だ

 新型コロナウイルスの感染拡大による景気悪化を受けて、日銀が金融政策決定会合で追加の金融緩和策を決めた。
 緊急経済対策で財政出動を積極化している政府の財源を賄う国債買い入れの上限撤廃や、企業の資金繰りを支援するための社債などの購入枠拡大が柱になる。
 日銀は3月の会合でも、上場投資信託(ETF)の購入増を柱とする3年8カ月ぶりの追加緩和策を打ち出した。動揺していた金融市場の安定が狙いだった。
 それ以降、政府の緊急事態宣言で経済活動はさらに縮小している。
 飲食店や百貨店、航空会社などの売り上げが急落。コロナに関連した中小企業の経営破綻は4月に急増し、全国で100社に達している。
 前回に続く緩和策は、経済活動の停滞が長期化すれば、感染終息後の回復さえ難しくなるという強い危機感の表れだろう。企業倒産や失業者の急増を回避する資金繰り支援は当然の対応である。
 国債買い入れ枠の撤廃は、無制限購入などに動く米欧の中央銀行と足並みをそろえた形になる。日銀が追加緩和に消極的とみられれば、輸出企業の収益に悪影響を与える円高が加速する恐れもあり、その意味では効果はあるだろう。
 一方、こうした異例の政策が将来の経済に与えるリスクもある。
 政府が国会に提出した2020年度補正予算案は国民1人10万円の現金給付など総額25兆円余りに上り、9割を赤字国債の発行で賄う。今後も飲食店の家賃補助など追加の経済対策は避けられまい。
 日銀による国債の大量購入は、政府の財政規律の緩みを許すことになりかねない。
 日銀は黒田東彦総裁の就任後、安倍政権が掲げるアベノミクスと連携して大規模な金融緩和を「出口」なしに続けてきた。国債発行残高も既に半分近くを持っている。
 政府の資金繰りを日銀が支える禁じ手である「財政ファイナンス」と市場が受け止めれば、国家財政への信認が揺らぎ、金利が急上昇する恐れもある。
 日銀はもう一つの柱として、企業が発行する社債などの購入枠も計20兆円と破格の規模にまで増額。資金繰りを支える姿勢を打ち出した。
 ただ、これも景気悪化局面で社債などを購入すれば、企業倒産で損失を負うリスクも抱え込むことになる。日銀には景気の下支えだけでなく、中央銀行の信認を維持する目配りも求められよう。
 今回の事態はリーマン・ショックとは危機の本質が異なる。感染抑止のために人や物の動きが制限され、経済が停滞している。今の局面では日銀の資産買い入れ拡大で市中に出回る資金の量は増えても、経済の好循環は働くまい。
 政府は、追加対策を含め日銀頼みのばらまきに堕することなく、本当に困窮している国民や企業の支援策を精査しなければならない。

カテゴリー: 社説

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