2020.04.23 08:00

【コロナと雇用】政府はスピード感欠く

 新型コロナウイルスの感染拡大による景気悪化で、解雇や雇い止めになった人の悲痛な声が大きくなっている。
 労働組合や労働問題に取り組むNPO法人への相談が3月以降、急増している。
 厚生労働省の調べでも、国内で感染が広がり始めて以降、解雇されたり雇い止めされたりする見込みの人は今月16日時点で約2千人。3月上旬から4倍以上になった。
 業種では、訪日客の急減や外出自粛の影響をもろに受けてきた観光や飲食関連が目立つ。製造業なども含め、派遣や契約社員ら立場が弱い非正規雇用の働き手を中心に雇用不安が広がりつつある。
 昨年10~12月期と今年同期を比べた失業者数の増加幅は、大勢の労働者が職と住まいを失い、東京・日比谷に「年越し派遣村」が開設された2008年のリーマン・ショック時を上回るという試算もある。
 経営者の苦境は理解できる。やむにやまれず解雇に踏み切っているケースも少なくないだろう。
 ただ、雇用は働き手とその家族にとって暮らしの基盤にほかならない。働く機会が奪われては、ウイルス感染とは別の次元で人々の命を脅かす恐れさえある。
 企業の努力と、行政によるセーフティーネットの構築が必要だが、その政府の動きが心もとない。
 政府は、雇用をつなぎとめる事業主に休業手当の支払いを補助する雇用調整助成金を拡充している。
 4~6月の特例措置として、中小企業は最大10分の9に助成率を引き上げ。本来は雇用保険の加入者が対象だが、パートやアルバイトといった週20時間未満勤務の非正規労働者らも対象とする。
 ところが、この助成金の相談は既に十数万件に達したにもかかわらず10日現在で支給申請は463件、支給決定は3件でしかない。
 手続きが煩雑な上、支給までに2カ月もかかってきたことが活用が進まない理由だろう。批判を受けた政府はようやく申請書類の簡素化などで支給までの期間を1カ月に短縮すると発表した。
 売り上げが前年同月比で50%以上減った個人事業主に最大100万円、中堅・中小企業に最大200万円を支給する「持続化給付金」も、早くても大型連休明けからになる。
 あまりにもスピード感を欠く。雇用を守るための制度が本来の役割を果たせていないのではないか。迅速な給付や助成の充実に向けて、政府は不断の見直しが必要である。
 高知県内でも県が3月に創設した制度融資の申請が、わずか1カ月でリーマン時の5カ月分に当たる融資枠を超える見通しになった。中小事業者の窮状を物語る。県内は、苦境に立つ宿泊・飲食業で働く人の割合が高いのも心配な材料だ。
 感染症が終息しても、人々の生活基盤が壊れていては安倍晋三首相が言う「V字回復」などあり得まい。迅速で継続的な支援を求める。

カテゴリー: 社説

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