2020.04.19 08:00

【韓国総選挙】政権の危機管理力に評価

 韓国総選挙は、革新系与党「共に民主党」側が国会定数300の6割に当たる180議席を獲得し、保守系最大野党「未来統合党」などに圧勝した。
 これで文在寅(ムンジェイン)大統領は、2022年5月の任期末までの政権運営の基盤をほぼ固めたとみられている。
 新型コロナウイルスの感染拡大で選挙前は与党・文政権側の劣勢も伝えられた。中国からの入国制限の遅れや、文氏の楽観的な発言などを野党側が強く批判したからだ。
 しかし、文政権による積極的なウイルス検査や施設での軽症者隔離などが奏功し、2月下旬~3月上旬のピーク時に1日900人を超した感染者が最近、30人前後に低下するなど状況は落ち着いていた。
 そうした対策が「成功例」として海外メディアに報道され、文政権の危機管理能力の評価アップにつながった。国内外の高評価が選挙の「追い風」になったのは間違いない。
 長期化する心配もある新型コロナ問題により、韓国はもとより世界経済は厳しい状況にある。文氏が政権運営を安定させることで、経済立て直しに全力を尽くすよう国民は望んだともいえる。
 朴槿恵(パククネ)前政権が、14年の旅客船セウォル号沈没と15年の中東呼吸器症候群(MERS)の感染拡大への対処を誤り、国民から批判を受けた。
 危機管理の大切さを、野党時代の文氏は痛感したのだろう。「国民の安全」に関わる問題に就任当初から力を入れ、朴政権の失敗を教訓にしたといえる。
 総選挙前は、感染拡大を有権者が心配するため投票率が伸び悩むとの見方があった。
 韓国では、低投票率なら保守系に有利とされてきた。保守的な傾向が強い60代以上は毎回多くが投票しているためだ。
 一方で革新系の支持者が比較的多い20~40代は選挙によって投票率にむらがある。そうしたことから「共に民主党」は危機感を抱いていた。
 だが、ふたを開けてみると66・2%(暫定値)。1992年の総選挙以来の高さだった。新型コロナや経済状況への国民の不安の裏返しが高い投票率になったとも考えられる。その期待に応える政権運営が文氏には求められる。
 元徴用工訴訟問題や半導体の輸出規制問題などを抱える日韓関係は、この選挙後に改善するだろうか。
 選挙戦では与野党とも内政や新型コロナ対策に議論が集中し、日韓関係は大きな争点とならなかった。
 新型コロナの影響で世界経済の先行きが不透明な中、人の交流や貿易面で歴史的にもつながりが深い両国の関係改善は重要だ。互いに歩み寄る努力が必要だろう。
 文氏の後継者には、ソウル中心部の選挙区で当選した李洛淵(イナギョン)前首相の名前が挙がっている。
 李氏は、韓国で孤児を育てた故田内千鶴子さんの縁で高知県と姉妹交流協定を結ぶ全羅南道(チョルラナムド)の知事を務めた人物だ。そうした意味でも日韓関係の将来に注目したい。 

カテゴリー: 社説

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