2020.04.18 08:00

【一律10万円給付】後手対応はもう許されぬ

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の停滞で多くの国民が苦しむ中、安倍政権の迷走は失態というほかない。困窮する人の救済をとにかく急ぐべきだ。
 緊急経済対策の柱になっている家計への現金給付で、安倍晋三首相は所得制限を設けず全国民に一律10万円を給付する方針に転換した。減収世帯に限った30万円給付は取り下げた。
 緊急経済対策に対応する2020年度補正予算案は7日に閣議決定したばかりで、20日に国会提出する予定だった。極めて異例のドタバタ劇である。
 従来の「1世帯30万円」は、2~6月のいずれかの月に世帯主の収入が半分以下に減り、年収換算で住民税非課税となる水準の2倍以下であれば給付する―などの内容だった。
 しかし、対象の線引きが複雑で分かりづらく、1人暮らしも大家族も同じ1世帯30万円では不公平感が生じる。対象も全約5800万世帯のうち1千万世帯超にすぎない。
 共同通信が10~13日に行った世論調査では、「妥当」とする人が2割強だったのに対し、一律給付を求める回答は6割以上に上った。
 首相の方針転換は、与党が突き上げた結果である。76%余りが「評価しない」と答えた布マスクの配布もそうだが、与党内でも政権中枢が民意を把握できていないという危機感の強い表れだろう。
 全国民への一律10万円給付も難点は指摘されてきた。西村康稔経済再生担当相は国会答弁で、リーマン・ショック後に1万2千円を給付した例を挙げ、給付漏れや重複を防ぐため給付開始までに「2カ月半かかった」と説明している。
 ところが、高市早苗総務相ら閣僚は方針転換後になって、従来案と比べ「はるかに早く行き渡る」と強調した。政府の国会答弁は「1世帯30万円」を押し通すための強弁だった疑いもある。
 所得制限を外した一律給付はスピード感を意識した面もあろう。ともかく迅速な対応が必要だ。
 一律給付は富裕層も対象になり、本当の困窮者への支援が手薄になりかねない心配もある。専門家には、富裕層からは事後に課税することも可能とする意見があり、政府は有効な仕組みを検討すべきだろう。
 必要な経費も従来案の約4兆円から12兆円超に膨らみ、国の財政圧迫が予想される。規模先行になった緊急経済対策には、感染症対策と関連が薄い「不要不急」の予算が交じっていないか。困窮者の救済を最優先とする見直しも欠かせまい。
 一連の外出自粛要請で収入が減った人や中小企業、個人事業主からは「もう待てない」という悲鳴が上がっている。家計への支援に加え、休業要請に対する補償も財政状況が異なる各自治体任せではなく、国が調整を担うべきではないか。
 国民の生命や財産を守るのが政府の危機管理である。これ以上、後手に回った対応は許されない。

カテゴリー: 社説

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