2020.04.17 08:00

【緊急事態宣言】国は重い責任を負った

 安倍晋三首相が新型コロナウイルスの感染拡大に対応する緊急事態宣言の対象地域を、全都道府県に拡大することを決めた。
 これまで東京、大阪など7都府県を対象に宣言していたが、このままでは感染拡大に歯止めをかけるには不十分と判断した。
 政府は緊急事態を大型連休最終日の5月6日までに終えるために、人と人との接触を「最低7割、極力8割」制限することを求めてきた。だが東京都などでは「どうしても休めない」「テレワークは難しい」などと、マスク姿で会社に急ぐ人々の姿も見られた。
 電車などの時差出勤も思うように進まない。東京、大阪の最初の平日で主要駅周辺の人出は、感染が拡大する前に比べ40~60%台の減少率。外出抑制の要請前からは減少したものの、「7~8割減」の目標にはまだまだ届かない。
 こうした現状に「人との接触制限が7割減にとどまると、新たな感染者が目に見えて減るまでに2カ月かかり、収束まで長期化する」と警鐘を鳴らす専門家もいる。
 外出自粛などの対策期間を短くするには、人との接触を8割減らせば、15日程度で感染の拡大を抑えられ、潜伏期間などを考慮すると、1カ月で感染者が大幅に減ったと分かるという。
 いずれにしても、緊急事態宣言以降、7都府県の取り組みは不十分で、目に見える効果を上げていない。医療提供の体制が逼迫(ひっぱく)しており、医療崩壊の懸念も消えない。
 懸念されるのは、東京都などのバーやナイトクラブ、カラオケ店などの休業要請によって、利用者が他地域へ移動することだ。感染者が拡散すれば、地方の医療体制は都市部よりもろい。
 感染者の増加で愛知県や京都府が、緊急事態宣言の追加発令を国に要請している。石川県やバーで「クラスター(感染者集団)」が発生した高知県の宿毛市など、独自の宣言を発令する自治体も相次いでいる。
 人の移動を抑えるには、全国一斉の取り組みができる宣言拡大はそれなりに期待できよう。国民の危機感も高まるかもしれない。
 緊急事態宣言は新型コロナ特措法に基づくため、新たに対象となった地域の知事は不要不急の外出自粛要請に法的根拠を持つ。だが、強制力はなく、やることはこれまでと同じ国民への呼びかけだろう。
 心配なのは、政府と自治体の意思疎通だ。休業補償を巡って、政府と東京都の調整が難航し、宣言から3日を要した。補償額についても自治体間に格差が生じると、店舗などに不公平感を生みかねない。
 47の都道府県と調整をするだけでも、国の役割は格段に重くなった。高知県の浜田省司知事は「緊急事態の一歩手前」との認識だ。宣言はその背中を押す。
 私権の制限を含む法的根拠を持った、宣言の網を全国にかけた。国はより重い責任を負った。

カテゴリー: 社説

ページトップへ