牧野博士の植物愛きらり アート絵本「まきのまきのレター」

〈わたしには成し遂げたいことがある。それは日本のすべての植物を分類し名前をつけること〉--牧野富太郎と植物を愛する喜びを伝えるアート絵本「まきのまきのレター」が刊行されている。

「牧野さんは笑顔がとてもすてきな人で、その人生観とか芯の強さを笑顔で表現したかった」
イラストレーターの佐々木香菜子さんが話す通り、博士の優しい笑みに導かれて絵本のストーリーが流れていく。

ただ何となく幼いころから草木が好きだったのだ。
植物採集と研究に暮れる日々、莫大(ばくだい)な借金の原因ともなる資料本の大量購入、そして何より植物を愛することの幸福--。植物のイラストは、博士による植物図のように細密に描かれる一方、大胆に抽象化もされて美しい作品世界を構築している。絵に添えられた簡潔な文章は、牧野富太郎の生涯と人となりを端的に捉える。
〈本屋に入ると、気になる本は全部ほしくなってしまう。けちけちしていては植物学者にはなれない〉
〈ある日通りがかったお菓子屋で驚くべき発見をした。といってもそれは植物ではなかった。すえ という名前の美しい女性だった〉



印刷と製本を手掛けたのは弘文印刷(高知市与力町)で、全編が土佐和紙というのは初めての試みだった。
弘文印刷の楠淳一社長は「あえて古いタイプの印刷機を使うなど試行錯誤を重ねた。さらに土佐典具帖紙は、透けて見える極薄の手すき和紙で発色も優れ、これまで見たことのない印刷物に仕上がった」という。
池田社長は「高知の人たちと組んで想像以上の出来となる絵本になった。牧野富太郎という人の魅力を知るというよりも体で感じるような絵本になったと思う。気がめいるような今の世の中にあって、目標に向かって困難を乗り越えていく人間本来の強さも伝われば」と話している。

アート絵本「まきのまきのレター」の通常版=右=と土佐和紙特装版
通常版は2750円、和紙特装版は11万円。高知市南御座の「高知 蔦屋書店」と県立牧野植物園(通常版のみ)で販売していたが、新型コロナウイルス感染防止で休業・休園中。購入など問い合わせはENYSi(03・6721・8447)へ。(竹内一)