2020.04.06 08:00

【県公文書条例】恣意的な運用防いでこそ

 高知県公文書管理条例が4月施行され、高知市丸ノ内1丁目に高知県立公文書館がオープンした。これまで県の公文書管理は内規によって行われてきたが、条例で作成、保存、利用などのルールが定められた。政策決定過程などの重要な情報を記録した公文書は「歴史公文書」として同館で永久保存し、利用請求をすれば誰でも閲覧できるようになった。
 県の内規では公文書の保存期間を内容により1年、5年、10年、30年と設定。満了すると、延長しない場合は基本的に廃棄してきた。
 こうした公文書管理は、公務員の恣意(しい)的運用の温床になると長らく指摘されてきた。県でも1999年、当時の職員が土佐闘犬センターへの融資(別件闇融資)を起案する公文書を破棄した事件が起きている。
 公文書を闇に葬るような廃棄を防ぐため、全国で初めて高知県で義務化された仕組みが、廃棄の妥当性などを3段階にわたって判断する「3重チェック」だ。
 第一に県の担当課が公文書の作成・取得時に24項目の選別基準に基づいて、保存期間などを判断する。それらを記した管理簿は翌年度に公表する。
 保存期間が満了すると、第二のチェックとして公文書館が期間延長や、歴史公文書として公文書館に移管するか、廃棄するかを判断。その結果が有識者による第三者委員会に諮問される。最終関門となる第三者委は県側の判断を覆すこともできる。
 行政だけでなく「県民目線」を入れ、県政の透明度を高める狙いだ。一方、3重チェックは県職員にとっても意味があるだろう。森友学園をめぐる公文書改ざん問題で、改ざんを指示されたと書き残した近畿財務局元職員が自死し、遺族が真相究明を求めている。万一、県職員が不当な圧力にさらされた場合、条例に沿って残された公文書が身を守る「保険」にもなろう。
 公文書館に移管された歴史公文書は閲覧できるが、利用制限も行われる。対象は個人情報や公共の安全に支障がある情報などだ。不服がある場合は、知事に審査請求をすることができる。
 今回、県の公文書管理のルールと拠点は整ったが、適切に制度を運用するためには「人」の課題が残る。公文書の整理や分析に知見を持つ専門家「アーキビスト」の育成が急務だろう。調査研究はもちろん、政策過程を見極める行政職員としての素養も必要とされる。
 同館は県内市町村とも連携し、公文書管理に対して助言や支援を行い、職員の意識を高める役割も期待されている。
 同条例は公文書を「健全な民主主義の根幹を支える県民共有の知的資源」と位置付けた。公文書は私たち県民の財産。地域の歩みを記録し、後世の検証に欠かせない「歴史の証言者」である。恣意的な廃棄や、ずさんな取り扱いは許されない。
 県民の厳しい目で、県の運用を見守る必要がある。

カテゴリー: 社説

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