2020.04.05 08:00

【食料自給率目標】先送りで問われる本気度

 政府は農業政策の指針となる「食料・農業・農村基本計画」を閣議決定した。カロリーベースの食料自給率を2030年度に45%に引き上げるとした。
 45%の目標は25年度までの従来計画と同じで、達成時期を5年先送りしたことになる。とはいえ輸入農産物との競争は厳しく、先送りしても目標達成は難しい。自給率アップへ政府の本気度が問われる。
 基本計画は今後10年間の農業政策の方向性を示すもので、5年ごとに見直している。食料自給率は1960年度に79%と高かったが、2018年度は37%と過去最低水準に落ち込んでいる。
 自給率が高いコメの消費が減るなど食生活の変化とともに、農家や農地の減少で供給体制が衰えていることが大きい。環太平洋連携協定(TPP)などの発効で、安い農産物の輸入は拡大傾向にある。今後も自給率向上は並大抵ではない。
 新計画が打開策として打ち出しているのが、農林水産物・食品の輸出増だ。輸出用農産物は緊急時、国民への供給に回せるため国産として扱う。19年実績は9千億円余りで政府目標の1兆円に届かなかった。
 これを30年に5兆円に引き上げる戦略だが、新型コロナウイルスの世界的まん延で今年1月以降、農産物輸出は前年割れで推移。海外の景気低迷が長引けば輸出が停滞する恐れは拭えない。それでも人口減で国内市場が縮むことを踏まえれば、海外販路を開拓する地道な努力は続ける必要がある。
 食料供給体制の底上げも急務だ。
 農業者数は15年の208万人から30年には140万人に減少。農地も19年の440万ヘクタールが、何の対策もしなければ392万ヘクタールに減ると見込まれている。
 国は耕作放棄地などを集積。経営改善を目指す農業者らを育成する対策を講じてきたものの、担い手不足の解消には至っていない。
 中山間地が多い高知県では農地集積にハンディがある中、集落営農が進められてきた。集落ぐるみで機械の共同利用や資材の同時購入などを行い、コスト低減や効率化を図る。組織数はこの10年で220を超えるまでになった。ただし高齢化や後継者不足の進行で、活動が停滞する組織も出てきている。
 小規模な農家が存続していくために、集落営農が有効な手段であることは間違いない。行政には組織の立ち上げ時はもとより、息の長い支援が求められよう。家族経営や集落営農、法人経営など、さまざまな形で地域の農業が自立できる方法を模索しなければならない。
 世界に目を転じると、地球温暖化による干ばつなどの増加で穀物価格が上昇したり、食料不足や飢餓のリスクが高まったりすることが懸念されている。新型コロナウイルスなど未知の感染症拡大では、各国の農産物生産が滞る恐れもあろう。輸入頼みには危うさがつきまとう。
 政府はより一層、危機感を持って自給率を高めなければならない。

カテゴリー: 社説

ページトップへ