2020.04.03 08:00

【トヨタとNTT】提携で次代産業の道探れ

 「業界の巨人」であるトヨタ自動車とNTTが資本提携し、次世代都市「スマートシティー」事業の推進に乗り出すことになった。
 自動車業界は自動運転など次世代車、一方で通信業界は第5世代(5G)移動通信システムといった大容量の情報サービスを巡る競争が世界的に激しくなっている。
 両社がそれぞれ得意とする先端技術を駆使して、スマートシティー構築で世界をリードすれば経営基盤は一層強化される。提携にはそんな狙いがある。
 成長分野であるスマートシティー事業には、グーグルやアップルなど「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業も関心を示している。中でもグーグルは、人やモノの動きをセンサーで把握する街づくりにカナダで既に乗り出している。
 次代の社会や人々の暮らしを左右するかもしれないこの事業の主導権を握るかどうかは、一企業の将来の業績に影響するだけではない。企業が関係する国の産業面でも新たな道を切り開く可能性がある。
 GAFAなどとの激しい競争が始まるが、業種の全く異なる巨大企業の提携でどんな「化学反応」が生まれるのか。各国の企業も注視しているはずだ。
 スマートシティーは、あらゆる機器がインターネットにつながるIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)、ビッグデータといった先端技術を活用し、環境に配慮した快適な生活の実現を目指す。
 車の位置情報をネットで集め、AI技術で渋滞を緩和したり、事故を減らしたりするシステムの開発も検討されている。
 トヨタは1月、静岡県の工場跡地に自動運転やAIなどを実生活の場で検証する次世代都市の建設を表明していた。だが、ネットなどの通信基盤を単独で整備する技術に乏しく、NTTとの提携を決めた。
 NTTも提携に期待している。
 グループの利益の多くを担ってきた携帯や固定電話は国内での展開が中心だ。しかし、人口減が続く中、大きな成長は今後見込みにくい。
 そこで各地で構想の具体化が始まったスマートシティーに注目していた。実現には効率的な移動手段の導入が不可欠で、トヨタの技術が必要だった。
 トヨタは、パナソニックと住宅関連事業を統合している。住宅事業や車、家電などの先進技術をスマートシティー実現に生かす狙いだ。先端企業同士の提携は今後ますます増えそうだ。
 しかし、便利さには大きな落とし穴も潜む。通信機器や車、住宅、家電などあらゆるモノがネットで高度につながった社会は、情報がいったん流出すると取り返しがつかない事態を招きかねない。
 国内の携帯電話大手3社がサービスを始めた5Gでも同様の懸念がある。情報セキュリティーの面で心配がないような次世代都市の構想を描いてほしい。

カテゴリー: 社説

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